女性だけが獅子奮迅する社会はもう続かない 小室淑恵「男性の育児休業は義務化が必要だ」

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船橋:その発想はどこから生まれたのですか。

小室:学生時代、1年間、アメリカに放浪の旅をしていたときに、住み込みでベビーシッターをしていたときに、そのホストマザーの女性が、もともと証券アナリストだったのですが、育休中にeラーニングで勉強して、ステップアップして会社に復帰していました。その姿を見て、当時21歳の私は「eラーニングってすごい、インターネットは、時間や場所の制約のある人の能力をこんなにも開花させるんだ」と感銘を受け、「女性の働き方を大きく変える力がある」と確信しました。

私は江戸文学を専攻していた女子大の学生でしたが、その後、1998年にインターネットベンチャーにインターンに行って、多くのことを学びました。その経験が資生堂という育休者の多い企業に就職して化学反応を起こし、育休中にeラーニングでスキルアップして復職を支援するプログラムを販売するという発想が生まれたのだと思います。

次々と政府の審議会委員に

船橋:面白いですね。そうだったんですね。そして、経営企画室に異動して、その後、退社して起業、さらに、政府の委員を幾つも兼務するということになるわけですが、どうして、こんなことがお1人でできたのでしょうか。

小室淑恵(こむろ よしえ)/株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長。(財)東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会顧問、安倍内閣産業競争力会議民間議員、経済産業省産業構造審議会委員、文部科学省中央教育審議会委員、厚生労働省社会保障審議会年金部会委員、内閣府子ども・子育て会議委員、内閣府仕事と生活の調和専門調査会委員などを歴任。株式会社オンワードホールディングス社外取締役、金沢工業大学客員教授、アクセンチュア株式会社インクルージョン&ダイバーシティ・アドバイザリー・ボード、朝日生命保険相互会社評議員。『働き方改革―生産性とモチベーションが上がる事例20社』(毎日新聞出版)『6時に帰るチーム術』(日本能率協会マネジメントセンター)など著書は約30冊(撮影:梅谷秀司)

小室:結果的にそうなりましたが、もともとは「どぶ板」でした。

船橋:「どぶ板」って?

小室:2006年に「ワーク・ライフバランス」という社名で起業をしたときには、その意義を理解して下さる人はおろか、そもそもそこに日本社会の課題があると考える人が誰もいない状況でした。働き方のコンサルティングという事業内容に対して「そんなことが事業として成立するの?」という反応でした。そもそも「ワーク・ライフバランス」という言葉がまったく浸透していませんでした。

幸運だったのは、起業したばかりのときに、当時内閣府男女共同参画局長をされていた板東久美子さん(文部科学省高等教育局長、消費者庁長官などを歴任)と出会ったことです。私が東京農工大学で講演に呼ばれた際に、偶然その講演を聴いてくださいました。その日の夜にお電話をいただき、男女共同参画審議会の委員就任を打診されました。まだ、事務所もなく、自宅のマンションの一角で、生後2カ月の乳飲み子を抱えながら仕事をしていた31歳の時で、本当に驚きました。そんな状況で、最初に政府の審議会委員の端っこに入れたというのが、その後の活動に弾みになりました。

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