病院からゴディバまで、投資ファンドの最前線 プライベート・エクイティの投資額が急増

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新しい形態の投資や投資の大型化が進む一方、PE投資に資金が流れ込み、近年は投資先企業の価格が高騰するなど、市場の過熱感も指摘されている。

「レバレッジ水準は、リーマンショック前の2006年ごろに近い。場合によってはそれを超える水準になっている」。CVCキャピタル・パートナーズの赤池敦史社長はそう指摘する。

かつてその倍はあったLBOファイナンスの金利水準は、(基準金利に上乗せした金利である)スプレッドで2~2.5%水準まで低下している。それだけ金余りとなっている証左だ。

赤池社長は「景気サイクルの調整局面には、企業価値が下がり、オーバーレバレッジ(過剰債務)になる。景気後退前にレバレッジを解消するなどの備えが重要だ」と警告する。

低金利下で利回りを求める投資家たち

世界の国債の4分の1がマイナス金利に沈む異様な環境にあって、利回りを求めてPEファンドへ出資を求める投資家は引きも切らない。

ブラックストーンは「来年1月から投資が始まる8号ファンドは史上最大の2.7兆円規模になる。成長市場はアジアで、全社的にもフォーカスを当てている」(前出の坂本氏)。

MBKの加笠氏は「リーマンショック後に資金が激減したが、戻ってきた。そのきっかけは2013~2014年以降に、日本に投資した案件がエグジットし、リターンが出たこと。単にリターンを出すだけでなく、投資先の会社を成長させたことが評価された」と話す。

【2019年8月29日13時18分注記】初出時の記事の、時期に関する記載を一部修正しました。

20世紀末にわが国でPEというビジネス手法が登場して、約20年が経過した。当初は「ハゲタカファンド」と忌避された存在も、得意分野や特色を出すなど、ファンドごとにすみ分けもできつつある。

日本の産業界に定着し、PE投資がこれまで同様にリターンをあげ続けることができるのか。それは今後到来すると思われる景気後退局面で、真価が問われることになる。

山田 徹也 東洋経済 記者

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やまだ てつや / Tetsuya Yamada

島根県出身。毎日新聞社長野支局を経て、東洋経済新報社入社。『金融ビジネス』『週刊東洋経済』各編集部などを経て、2019年1月から東洋経済オンライン編集部に所属。趣味はテニスとスキー、ミステリー、韓国映画、将棋。

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