日本人は医療費増大の本質をわかっていない 抑制狙うなら効果的な予防を推進すべきだ

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菅原:日本の社会保障について考えますと今はまだ大丈夫だけれど、将来のリスクはある。だとすれば、将来のリスクへの備えとして、今、私たちにできることはありますか。

菅原一輝(すがわら かずき)/慶應義塾大学総合政策学部に在学中。進学のため、秋田県から上京し、地方と都市の医療サービスの質・量の違いに驚愕し、入学後に医療・社会保障政策を専攻。現在は社会関係資本と健康の関係に関心を持っている(撮影:今井康一)

私が知る限り、皆さんは、「予防」について積極的に発言しておられます。アメリカでもオバマ大統領が、大統領選挙で「予防医療を行うことで医療費の削減を目指す」と発言していました。「予防」を行うことで医療費の削減はできるのでしょうか。

佐藤:「人生100年時代」の社会が到来することを考えれば、「予防」がとても重要になるのではないかと考えています。長い人生を健康に暮らし、社会に参加し続けられるかどうかは、国民1人ひとりにとっての幸せや生活の質(QOL)を大きく左右します。

また、経済社会全体で見ても、健康に長く活躍する人が増えれば、人口減少の中でも、社会保障の担い手を増やし、経済社会の活力を維持・強化することにつながると考えています。これはとくに、若手議員の中でそうした共通認識を持つ人が多く、自民党の有志議員で昨年立ち上げた「明るい社会保障改革研究会」などを通じて、現在さまざまな議論が進められているところです。

人生100年時代の安心の基盤は健康

これまで、健康は自己管理が原則でした。しかし、これからは、科学的根拠(エビデンス)に基づいて、国民の健康に効果のある健康管理を、広く社会全体に広めていく必要があると考えています。そうすれば、多くの国民の方々に長く元気に活躍してもらえる社会が実現できると考えています。

社会保障というのは、高齢や病気、障害、貧困などによって困難な状況に陥った人々を社会全体で支え合う仕組みです。もともと社会保障分野には年金、医療、介護、今は子育て支援もここに含まれるようになりました。

今私たちが構想しているのは、社会保障の第5の分野として「予防・健康づくり」を入れるべきだということです。人生100年時代の安心の基盤は健康であると考え、予防・健康づくりを社会全体で進めるよう、政府に求めているところです。

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