「不当な扱いを受けたら即転職」の時代は来るか

「ジョブ型」は会社と個人の双方にプラスだ

中野これまでの無限定社員の問題の1つが、その企業にしか通用しないスキルだけが磨かれて、他社で通用する専門性がないから転職ができないということでしたね。日本は転職がしにくいというけれど、転職市場がないわけではなく、転職に踏み切れる人が少ない。

:ジョブ型になっていけばその人の使用価値って何なのかを本人も企業も意識せざるをえない。40歳を過ぎて平社員でも賃金が自然に上がっていくというのは実際のパフォーマンスを反映しているのではなく、生活保障的な側面が強かったわけです。

転職すると賃金は下がるから、移動が妨げられてしまう。そうして企業は社員を囲い込んできたわけです。でも中高年になって、「追い出し部屋」に追いやられたというような話がありますが、そういうものがあること自体が日本特有の奇異な現象。不当な扱いをされたら辞めればいいわけですよね。

ジョブ型にするなら、共働きがデフォルト

中野:男性で育休取得後に転勤が命じられ、退職したという事例がSNSで話題になりました。一方で企業側は配置をいくつか提案したけれどそれが不服で訴訟しているという事例もありますね。でも拠点がなくなるなどで配置転換は致し方なく、それに応じられないならそのエリアで別の仕事を探す、ジョブ型にするしかない。

鶴光太郎(つる こうたろう)/1960年生まれ。慶應義塾大学大学院商学研究科教授、経済産業研究所(RIETI)プログラムディレクター/ファカルティフェロー。東京大理卒、オックスフォード大学大学院経済学博士(D.Phil.)。専門は組織と制度の経済学(撮影:尾形文繁)

欧米企業では30代後半から賃金は上がりにくいですよ。生産性が上がっていくわけではないので、ジョブ型賃金はそのようなカーブになる。ただそこが、中野さんが新刊で書かれているような家族システムの話とリンクしてしまっているわけですよね。

ジョブ型にするなら、共働きをデフォルトにしていかないと厳しい。これまで無限定正社員と主婦の組み合わせだから成り立ってきたわけだけれど、ジョブ型の片働きで住宅ローンを組んで子どもの教育費もかかってとなると、経済的に難しくなる。非正規社員はやはり安定しないので、夫婦共に正社員になって、どちらかあるいは両方がジョブ型というのが安定的な形だと思います。

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