(第24回)企業の採用意欲は依然旺盛 2010年度新卒採用の実態調査

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●企業優位。しかし、ここ数年の課題となっている質の採用には依然として苦戦

【図5】
【図6】
【図7】
 採用担当者に、採用活動の序盤戦を終えての感触を聞いた【図5】ところ、「昨年より企業優位」が50.7%(218社)と、「学生優位」の0.7%(3社)を圧倒的に引き離している。
 ところが、ここまでの採用活動の手ごたえを聞くと【図6】、「量は問題ないが、質の高い学生の採用は苦戦しそう」が43.5%(187社)と最も多く、「質量ともに苦戦しそう」の16.3%(70社)がそれに続く。「質量ともに良い学生が採用できそうだ」と答えたのは全体の12.3%(53社)に過ぎず、採用担当者の多くは今の状況を「簡単に優秀な学生が採れる」と楽観視してはいない。
 これには、学生のレベル低下に歯止めがかかっていないと感じる採用担当者の危機感も影響しているようだ。「2010年度入社の新卒学生は"ゆとり教育第一世代"と言われているが、現時点で全体的な学生の質の低下を感じているか」と聞いた【図7】ところ、最も多いのが「昨年並み」の50.7%(218社)だが、「昨年より全体的に質の低下を感じている」が16.7%(72社)と、「質が上がっている」の3.3%(14社)を大きく引き離している。

 ここで言えることは、学生全体をマスとして捉えた母集団形成をもって行う「質の採用」への限界である。採用担当者と話していても、「複数の就職ナビからイチナビ(活用する就職ナビはひとつ)」を検討しようとしている企業が少なくない。景気後退によるこのような流れは就職情報会社の商品開発を左右しかねない状況とも言えそうだ。
 採用担当者が出会った学生について聞いたコメントをいくつか紹介してみよう。
・全般的にメールや文章では、質の低下を感じることはなく、学校側や媒体社の指導、ネット環境もあってか丁寧な対応ができているように思う。しかし会ったときの対応力のなさ、コミュニケーション力のなさに愕然とする。
・正解を求めてくる学生が多い。「○○したら不合格ですか?」「○○すれば合格ですか?」など。
・09年は福利厚生ばかり質問してきたが、10年は会社の業績・将来性など経営状況に対しての質問が増えた。
・数十人の文系学生と話したが、性別問わず業界研究が進んでおらず、景況感もあってか、手当たり次第という印象を受けた。また、昨年から感じていたことではあるが、今年は昨年以上に男子学生の弱さを感じる。
・とにかく危機感を覚えている学生が多い。しかし、何か行動を起こしている学生は少ないと感じる。昔は人事スタッフを見つけたらとにかく捕まえて、あれこれ質問して印象に残ろうとする学生が多かったが、今は遠巻きに見ているだけ、という印象。行動力・発想力がなくなってきている。
こうした学生に触れ、危機感を募らせる採用担当者は少なくないようだ。

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