「東京五輪」の新競技施設と浮かびあがる課題 都心で本格的なラフティング体験もしてみた

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大会時は東京テレポート駅や新木場駅からシャトルバスが出るということだが、通常時は路線バスしか走っていない。現時点だと最寄りのバス停である「環境局中防合同庁舎前」から徒歩20分となっており、何もないところをひたすら黙々と歩かなければならない印象が強かった。

指定管理者の一般財団法人・公園財団はスポーツ振興事業以外にも自主事業としてイベント開催などを考えているようだ。例えば海の森アウトドアフェスティバルなどはその一例。確かに周りに施設がない分、大きな音は出せるし騒音公害の心配はない。

観客席には整備費予算の関係で屋根を全面につけることはできなかった(編集部撮影)

しかし、テスト大会の世界ボートジュニア選手権大会では、周囲に日差しを遮る木々や建物がない点が懸念され「暑すぎる」という不満も観客から出たというから、来年以降が不安視される。

通常時に訪れる場合も、コンビニ1つもなく、あまりに閑散としていて、人を呼び込む魅力にいまひとつ欠ける場所だと言わざるをえないのだ。

ゆりかもめが走るお台場周辺の臨海副都心がオシャレな街としてにぎわっているだけに、「さらにもう一段階足を延ばして東京ゲートブリッジ近くの中央防波堤のところまで行こう」というモチベーションを人々に起こさせるのは容易なことではない。

東京五輪のレガシーを負の遺産にしないために

振り返れば、長野五輪のボブスレー・リュージュ・スケルトン会場だった長野市ボブスレー・リュージュパーク(愛称=スパイラル)にしても、五輪前に考えていた後利用計画がことごとく実行できず、稼働率が上がらず赤字が積み上がり、最終的に施設休止という結末を迎えている。

東京五輪のレガシーがそんな末路をたどることはあってはならない。そのためにも今のうちに手を打てるところは打ち、大会後にスムーズな後利用ができるような体制作りは必須だ。アスリートだけでなく税金を負担している東京都民、日本国民が有効活用できる場所として五輪後も関心を持つことが重要だろう。

元川 悦子 サッカージャーナリスト

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もとかわ えつこ / Etsuko Motokawa

1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、1994年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。著書に『U-22』(小学館)、『初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅』『「いじらない」育て方 親とコーチが語る遠藤保仁』(ともにNHK出版)、『黄金世代』(スキージャーナル)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)ほか。

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