「東京五輪」の新競技施設と浮かびあがる課題

都心で本格的なラフティング体験もしてみた

「今までは長瀞(ながとろ)や長良川など自然の川で練習していたのですが、天候条件に左右されがちで一定の環境を保ちながら競技に取り組むのが難しかった。でもこのコースができたことで、つねに同じコンディションでカヌーに乗ることができます。国際カヌー連盟の視察団が6月に訪れた際も『すばらしいコースだ』と絶賛されていましたし、私たち競技者にとっては本当に喜ばしいことです」

そういった前向きな声があるからこそ、カヌー競技の普及・拡大も同時に図っていかなければ意味がない。このカヌー・スラロームセンターにも73億円の整備費が投じられ、現時点では年間1億8600万円の赤字見通しが出ていることを考えると、恒常的にここを利用するアスリートを増やし、一般客も増やしていくことに努めていくことは必要不可欠なテーマと言っていい。

カヌー人口が増えず、一般客もそこまで伸びなければ、赤字幅がさらに拡大する恐れもある。実際、江戸川区には葛西臨海公園のような自然公園やバーベキュー施設が複数ある。東京臨海部という広域視点でみれば、レジャー施設としてのライバルは決して少なくないのだ。

もちろんアクティビティとしてではなく、水の安全研修などの形で学びの場としても活用できる(編集部撮影)

「協栄は3年10カ月の契約で指定管理者になりましたが、最初の業者であるわれわれが成功を収められなかったら、後に続く業者も出て来にくくなります。いかにして恒常的に人で賑わう施設にしていくのか。それを日々、真剣に模索していくつもりです」と前出の武藤氏も神妙な面持ちで語っていた。

彼らにとって本当の勝負は付帯施設を含めてすべてが完成し、五輪が開催された後になる。

海の森水上競技場の課題

葛西臨海公園から近いカヌー・スラロームセンター、JR新木場駅や東京メトロ有楽町線の辰巳駅から歩ける東京アクアティクスセンターはアクセス面に恵まれているため、何らかの形で利用価値を見い出せそうだが、徒歩圏に鉄道駅のない海の森水上競技場はそこが課題になりそうだ。同施設では、五輪本番の2020年8月3日から8月8日までカヌースプリント競技が開催されることになっている。

海の森水上競技場の施設を対岸からみた様子(編集部撮影)

今年6月16日に完成披露式典も開催され、8月7日から11日にはテスト大会となる2019年世界ボートジュニア選手権も行われた。

施設の近くまで車で行ってみたが、最寄駅とされるJR東京テレポート駅や東京モノレールの流通センター駅から車で15~20分はゆうに走る距離。

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