実録!ホームレス施設からハーバード入学の道 シングルマザーが実践!8つの「子育ての公式」

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大学で学費免除を受ける際も牧師が助けてくれた。大学進学を控えたジャレルは、相変わらずハーバード進学を夢見ていた。選考の一環として、地元に住むハーバード大学OBと面接をした。その面接官には気に入られたようだが、入試事務局が、ジャレルの申告した世帯所得があまりに少ないのを怪しんでいるという。学費免除を受けるためくわしい説明を求められた。

エリザベスは牧師に協力を求めた。すると、話し上手な牧師が、事務局を説得する手紙の書き方をジャレルに教えてくれた。

牧師は、2人で作戦を練ったときのことを覚えている。「彼にこう言ったんです。『愛情深い母に育てられ、12歳のときから牧師さまが導いてくださいました、僕を育ててくれた地域に恩返しがしたいんですと書きなさい』」。

エリザベスの巧みな子育ては報われた。彼女が下した決断、果たした役割のおかげで、息子は、有名校に通う生徒とはかけ離れた環境で育ったにもかかわらず、ホーケン高校やアイビーリーグの大学、そして社会に出てからも活躍する準備ができた。

ジャレルは現在、教師として働いている。彼は出世の階段を駆けのぼり、20代で校長に就任した。普通なら教室で授業を受けもち始めたばかりの年齢だ。ジャレルは2014年からニューヨーク市やニュージャージー州の学校に勤務し、近年はシカゴに活躍の場を移している。20代にして彼は、かつての自分と同じ境遇の子どもたちにチャンスを与えたいという熱い使命感に駆られている。

ハーバード育ち方プロジェクトで見つけた8つの公式

エリザベスは知らないうちに、息子の秘めた力を引き出し、決意と使命感にあふれる聡明な若者への成長を後押しする一定の子育てのパターンにしたがっていた。そのパターンこそが、ハーバード大学の学部生と大学院生あわせて120人にインタビューした「ハーバード育ち方プロジェクト」でわかった子育ての公式だ。

(1)まず、「最初の学びのパートナー」になる

赤ちゃんの脳は生後5年間に、成人の脳の重さの90%に達する。この時期に大切になるのが、「最初の学びのパートナー」の存在だ。親は最初の手ほどき役として子どもと長い時間を過ごし、読み書きを教えたり脳を鍛える遊びをしたりするなかで、想像力を刺激し学びたいという気持ちを育てる。

図書館で借りた本を読む、窓から見える標識を読む、フラッシュカードで文字と数の基礎を教えるといった母エリザベスの行動のおかげで、その息子ジャレルは就学前から、友達に差をつけることができた。エリザベスは、調べなければ答えられないような質問をわざとすることもあった。こうした問いかけも、ジャレルが学び手としての自信を育てるのに役立った。

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