実録!ホームレス施設からハーバード入学の道 シングルマザーが実践!8つの「子育ての公式」
その頃エリザベスは、別のシェルターの噂を聞きつけた。そのシェルター自体は、今滞在している施設ほどよいところではないが、その市内にあるロモンド小学校はオハイオ州屈指の教育レベルだという。
約1万坪の広大な敷地に建つロモンド小学校の校舎は、レンガ造りのジョージアン様式で、その教育水準の高さは『ニューズウィーク』誌に取り上げられたこともある。その当時、普通の家庭に近い落ち着いた暮らしができる自立支援シェルターに滞在していた。8歳であったジャレルもその「すばらしさ」を記憶していた。
彼女は選択を迫られた。居心地いいシェルターにとどまり息子を今の学校に通わせるか、シェルターの質は落ちても高い教育が受けられる学区に引っ越すか。迷うまでもない。シェルターが多少みすぼらしくてもいい。彼女は正しかった。
一流校への入学、よき指南役との出会い
この学校のすばらしい授業を通して、ジャレルは学力の基礎を固め、学年が上がっても同級生の一歩先を行くことができた。この学校で過ごした日々は、彼らに忘れられない印象を与えた。母子ともに、一流校とはどんなものか肌身で感じることができた。
エリザベスによると、息子はロモンド小学校での経験に加え、ハーバード進学を目標に掲げたことがきっかけで、富裕層の子弟が通う難関名門高校ホーケンに進む決意を固めたという。ジャレルは2回目の受験で、ようやくこの高校への入学を果たした。
振り返れば、よい学校に通わせるためエリザベスが引っ越したことは、息子をハーバード進学へ導く2つの重要な決断の1つだった。
もう1つの決断は、よき指南役に引きあわせたことだ。当時、家族で通っていた教会の牧師だ。グレッグ・ドーシ牧師は、エリザベスと3人の子ども(ジャレルと2人の妹)たちにいつも感心していたという。
「頭のいいすばらしい人です。住んでいる場所や人種、文化に関係なく、たとえシングルマザーでも、子どもが1歳をすぎたらその子の強みに気づかなくてはいけません」
なかでも牧師は、ジャレルの学力の高さと大人びた態度に心を動かされた。人との接し方を学ばせるため、牧師はジャレルを教会の活動に誘った。日曜学校で下級生に勉強を教え、教会のダンスグループやラップグループにも加わった。「ネクタイの結び方を教わりました。身なりを整えられるよう、着なくなった服もたくさんもらいました」とジャレルは語る。