専業主婦がいないと回らない日本の「構造問題」 複雑に絡み合う問題を分解する

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本田:この図を初めて提示したのは2008年のことです。戦後日本型循環モデルが崩壊しつつあるという図に関しては、あまり状況は変わっていないと思います。

バブル崩壊以降に正社員雇用が減少し労働環境が悪化したという点については、団塊世代の引退などで就職環境が改善しているので、やや正社員雇用が復活している側面はあると思いますし、一部には働き方改革が進んでいるホワイト企業もあります。

が、企業内の働き方は大きくは改善していないでしょう。仕事と家庭の関係も、いまだに男性育休の取得率は低く、女性の就労率は上がっているとはいえパート中心。家族と教育の関係も、家庭に教育費がのしかかり、家庭間で格差が広がるという状況が続いています。保育も足りていません。

循環モデルは一方向では成り立たなくなっている

中野:循環モデルでは教育→仕事→家庭→教育という形で一方向だった矢印を、これからは双方向にしていく必要があるとおっしゃっています。

本田由紀(ほんだ ゆき)/1964年生まれ。東京大学大学院教育学研究科教授。専攻は教育社会学。著書に『社会を結びなおす』(岩波書店)、『もじれる社会』『教育の職業的意義』(ともに筑摩書房)、『軋む社会』(河出書房新社)、『「家庭教育」の隘路』(勁草書房)、編著書に『現代社会論』(有斐閣)など(撮影:梅谷秀司)

教育→仕事はこれまでは人材が教育サイドから新卒一括採用で送り込まれるだけだったけれども、一度仕事に就いた人が再度戻ってリカレント教育を受けるとか、仕事サイドとの対話によって職業にとって有用な教育訓練をしていく。

仕事→家庭では妻が家族賃金を受け取るという形ではなく、きちんと男女ともにワークライフバランスが実現され、男性も家庭に関わるし女性も仕事や公的な場で報酬と発言力を得る。

家庭→教育も、家庭の資源によって子どもの有利・不利が左右されすぎないよう、学校が子どもの教育達成を保障したり保育園が増えて子育てに関する家族の負担を減らすといったことを提示されています。こうした双方向にしていく動きについて変化は見られますか。

本田:10年間こうした内容を発信してきたのですが、最近ようやく国の議論でも同じようなことが土俵に上がりはじめていると感じます。

まず仕事については、従来のような、時間・場所・職務が限定されず「いつ転勤辞令が出てもどこにでも行きます」「どんな業務でもやります」といったメンバーシップ型の働き方ではなく、ジョブ型雇用、つまり、ある特定の業務や、勤務場所、時間などを固定して働ける正社員を増やしていく必要がある。企業によってはテック系専門人材に新卒から1000万円を提示するといった事例がでてきていますよね。こういったことは事務系でも可能なはずです。

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