建設業界の勢力図が10年で一気に変わった背景 住宅企業が続々ゼネコンを傘下に収めた理由

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2社は2017年11月、住友林業が熊谷組に20%を、熊谷組が住友林業に2.85%を相互出資するかたちで業務・資本提携を結んだ。住友林業は1691(元禄4)年、住友家の別子銅山開坑、銅山備林経営開始をルーツに持ち、熊谷組も1898年に創業した歴史ある企業同士の提携でもある。

提携の狙いは、①木化・緑化関連建設事業、②再生可能エネルギー事業、③海外事業、④周辺事業(ヘルスケア・開発商品販売など)、⑤共同研究開発(新工法・部材・ロボティクスなど)の事業領域拡大となっていた。

350mの木造超高層建築物の実現へ

このうち木化とは、木材を使った大規模建築物のこと。住友林業は、2041年を目標に高さ350mの木造超高層建築物を実現する研究開発構想「W350計画」を打ち出しており、木化は「提携の狙いの本丸」という位置付けである。要するに、住友林業もまた都市開発という非住宅分野に活路を見出そうとしているわけだ。

住友林業が進める研究開発構想「W350計画」のイメージ(住友林業提供)

これを実現するためには、RC(鉄筋コンクリート)と鉄骨、そして住友林業が有する木のノウハウを融合、それによる耐火建築技術の向上を加速させることが求められ、熊谷組が持つ技術やノウハウを必要とし、それが提携につながった理由の1つとなっている。

提携から約1年半。とはいえ、シナジー創出や収益的にはまだまだ成功しているとは言いがたい状況である。そこで、両社は「緑化」を軸にシナジー効果の発現をすべく、取り組みを強化している。

その一例が、今年7月24日に熊谷組本社ビル(東京都新宿区)の大会議室で、熊谷組の社員と住友林業の社員が参加し開催されたセミナーだ。内容は「SDGs」経営についてであった。

SDGsは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略。2030年までに国際社会が取り組むべき普遍的な共通言語(目標)として17の項目が挙げられている。この中で、緑化が大きな価値を生み出すと考えられている。

セミナーでは、住友林業のグループ会社、住友林業緑化、熊谷組(現在は緑化事業を停止)を含めた緑化事業の実例紹介に加え、三井住友信託銀行フェロー役員兼チーフ・サステナビリティ・オフィサー経営企画部長の金井司氏による基調講演も行われた。

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