建設業界の勢力図が10年で一気に変わった背景 住宅企業が続々ゼネコンを傘下に収めた理由
2位の積水ハウスは、戸建て住宅や賃貸住宅の建設とその関連事業を収益源としながら、医療や介護、福祉などの非住宅分野、海外での住宅供給などへ事業の裾野を広げている。大和ハウス工業ほどの派手さはないものの、着実に規模拡大に結びつけてきた。
ハウスメーカーはゼネコンに比べ、非住宅建設というこれまで進出してこなかった分野があったこと、また住関連サービス提供という「日銭商売」(例えば賃貸住宅のサブリースによる収益)で比較的安定的に収益を確保できる体質であったことが、成長の土台としてあった。
また、ハウスメーカーは住宅であれ非住宅であれ、建材などについてある程度の標準化を行うことができた。大和ハウス工業、積水ハウスは住宅企業の中でも標準化率が高いプレハブ(工業化)ハウスメーカーである。
ビルやインフラ関連は標準化しづらい
一方、ゼネコンの場合は一つひとつの事業はビル、マンションやインフラなど規模や売上が大きなものが多いが、それぞれは標準化しにくい一点モノという側面がある。そのため資材や職人の獲得なども含め無駄が発生しやすく、収益が安定せず、拡大のための投資をしにくいという側面もあった。
加えて、バブル期以降、建設不況が長く続いたゼネコン業界と、減少傾向とはいえ年間新設住宅着工約80~100万戸台で比較的安定的に推移してきた住宅業界という明暗も、建設業界の勢力図の変更に大きな影響を与えたと考えられる。
さて、ハウスメーカーが傘下に収めてきたのは中堅ゼネコンであるが、ではなぜ、ハウスメーカーは彼らに白羽の矢を立てたのだろうか。住友林業と熊谷組の事例から考えてみる。
住友林業は木造住宅事業のほか、木材・建材事業、山林事業、エネルギー事業などを展開する企業だ。近年は、海外の住宅企業のM&Aを積極化することで、海外住宅供給で国内企業トップクラスの実績を上げている。
熊谷組は、黒部川第四発電所の成否を決めた大町トンネル(現関電トンネル)の難工事などを担当した企業として知名度が高い。バブル期の巨額不動産投資の失敗、建設不況により業績不振に陥っていた。2018年度の連結業績は売上高3890億円だった。
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