授業についていけない「外国ルーツの子」の苦悩 日本語が流ちょうでも勉強は別問題
日本語指導が必要な生徒は、高校に進学しても中退する率が平均より高い。
「日本に来たばかりの子は、話せないから『支援が必要だ』とわかりやすい。一方、日本生まれで日本国籍を持っていたり、来日して何年も経っている子は、サポートが必要と気づかれない。テストの点数だけを見るのではなく、何がわからないのか想像して、寄り添うことが大切です」
アニモでは学習効果を上げるため、グローバル教室と同じく講師には対価を払っている。指導に当たるのは、元教員や日本語教師など、経験のある人々だ。そのため月謝制だが、大阪市の「塾代助成制度」を利用して、家庭に負担がかからないようにしている。
20年間住んでも日本語が話せない例も
外国ルーツの子どもの教育では、その親の関与も重要だ。だが、中には塾代助成の申請書の書き方から説明しなければならない外国籍の親もいる。坪内氏はこれまで、外国人家庭のさまざまな生活相談にも乗ってきた。通訳として一緒に支援を行うのが、西淀川区在住の日系ブラジル人、セリアさんだ。
セリアさんは24年前にブラジルから来日し、工場で働きながら独学で日本語を勉強した。現在、中学3年生の娘を育てながら、地域の外国人家庭の相談役をしている。日本語がわからず、子どもの教育に不安を抱えている親は多いという。
「お母さんたちは、子どもが学校でいじめられるのではと心配しています。子どもはクラスの断片的な情報しか話さないし、お知らせプリントも日本語だから読めない。正確な情報が伝わらず、親は常に不安な状態です」
中には、生活のため工場で1日12時間以上働き、20年住んでいても日本語が話せない親もいる。当然、学校の面談や役所の手続き、病院など、生活の多くの場面で言葉の壁が立ちはだかる。セリアさんは15年ほど前から、地域の通訳ボランティアを始めた。5年前からは、教育委員会の依頼で学校の懇親会にも通訳として参加している。
しかし通訳支援がない地域では、親は子どもに学校を休ませ、役所や病院へ通訳として連れていくほかない。「外国人の親が、日本人に生活や子どもの相談をすることは、ほぼありません」とセリアさんは言う。
「私も、娘を0歳から保育園に入れていたけど、日本人のママ友は1人もいません。長く住んでいても、見えない壁があるのを感じます」
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