授業についていけない「外国ルーツの子」の苦悩 日本語が流ちょうでも勉強は別問題
一方で政府は、2018年に入管法を改正し、外国人に対する入口をさらに広げた。2019年からの5年間で、最大34万人余りを労働者として受け入れる予定だ。にもかかわらず、政府は外国人労働者を「移民」とは認めず、一定期間で帰国させる方針をとっている。だが、村上副理事長は「労働者はモノではなく、人」と強調する。
「今後も多くの外国人が来る中で、日本で家庭を持ち、子どもを作る人だって当然いるでしょう。対応を自治体任せにするのではなく、国がしっかり問題に向き合っていく必要があります。彼らが勝手に日本に来ているのではなく、国が政策として呼んでいるのですから」
学校に行っていない「不就学」問題も
現状、国が推進する外国ルーツの子どもへの教育支援は、各自治体が予算を一部負担するものが多い。つまり、自治体に予算がなければ、その地域での支援は行われない。問題への関心が高く財政的に余裕がある地域と、そうでない地域で教育格差ができている。住む場所によってサポート体制が違う、運試し状態になっているのだ。
また、外国籍の子は義務教育の対象外のため、そもそも学校に行っていない「不就学」問題もある。
しかし、政府も無関心なわけではない。2019年6月21日、「国や自治体には日本語教育を充実させる責務がある」と明記した「日本語教育推進法」が成立した。
柴山昌彦文部科学大臣は記者会見で「外国人の児童・生徒に対する教育」にも触れ、「これまで以上に日本語教育の施策をしっかりと推進していきたい」と述べた。今後は文科省や外務省など関係機関が連携し、具体的な施策が決められる。
「日本語教育推進法」は、国が初めて外国人への日本語教育の必要性を明示した、大きな1歩と言える。しかし、どんなに立派な理念を掲げても、実行されなければ意味はない。「法律ができたからよかった」ではなく、その先を見守っていく必要がある。
有田校長は、「社会の中で多様な文化と共生することは、日本人にとってもいいこと」だと言う。「グローバル教育というと、英語教育だけにスポットが当たりがちです。しかし、子どもの頃から異文化に親しんでいれば、大人になって国際社会に出たときスムーズに協力し合える、基礎づくりができます」。
そのためには、まず私たち大人が、外国人家族と共生していくビジョンを持たなければならない。
取材の帰り道、マリアさんに将来の夢を聞いた。はにかんだ笑いとともに、「まだわからへん。大学に入ってから考える」という答えが返ってきた。彼女が大学に入るのは、早ければ4年後だ。その頃この国は、彼女らにとって、住みやすい場所に少しでもなっているのだろうか。
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