授業についていけない「外国ルーツの子」の苦悩 日本語が流ちょうでも勉強は別問題
夕方、静かな住宅街を歩いていると、自転車の後ろに男の子を乗せた母親が通り過ぎていった。聞こえてくる会話はスペイン語だ。西淀川区には南米出身の家族が多く、大阪市内のペルー人の33%と、ブラジル人の20%が生活している。
子どもがいる外国人家庭は100世帯以上。中でも日本語指導が必要な中学生の数がとくに多い。そのため、区や学校が連携して、独自の取り組みを進めている。
マリアさんの通う大阪市立淀中学校は、生徒の5.9%が外国ルーツの子どもたち。週に1度、放課後に「グローバル教室」を開き、外国ルーツの生徒へ日本語や教科の指導を行っている。
「日本語がスムーズに話せるからといって、授業が理解できるわけではないんです」と、有田伸一朗校長は言う。
以前、校区内の小学校校長を務めていたときから、外国ルーツの子どもの問題を感じていた。「小学生は会話を身に付けるのが早いので、すぐに友達と話せるようになります。しかし、日常生活を送るための『生活言語』と、授業の理解に必要な『学習言語』は違います。さらに、文化の違いも壁となります」。
「文化」を理解しなければいけない難しさ
例えば算数だと、数式を解いていく計算問題ならとっつきやすい。しかし、「太郎君がりんごを3つ、花子さんが2つ持っていました。りんごは全部でいくつですか」と書かれると日本語が理解できず、解けなくなる。
社会や理科は、さらに難しい。独自の専門用語が多いほか、日本の昔ながらの生活や四季の違いなども出てくる。日本文化の中で育っていなければ、「春に咲く花は何でしょう」と聞かれても、サクラやチューリップとは答えられない。外国ルーツの子どもは、日本生まれであっても家庭の中は異文化であることが多い。
しかし、マリアさんのように日常会話に不自由しない場合、単に「学力が低い子」「本人がサボっているだけ」と誤解されがちだ。淀中学校では、外国ルーツの生徒の進学を目的に、前校長が放課後教室を始めた。当初は3年生のみだった対象を、1年生からに広げて昨年リニューアルしたのが「グローバル教室」だ。
教室を訪れると、生徒たちが黙々と机に向かい、苦手分野を勉強していた。複数の講師が机の間を巡回し、質問に答え、個別に指導する。講師はボランティアではなく、元学校教員や日本語教師が、学校から対価をもらい指導に当たっている。「このような支援はボランティア頼みになりがちですが、それではよくない」と、有田校長は断言する。
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