TikTokが「SNS拡散のハードル」を下げた理由 「○○メンバー、○○司会者」が自己増殖&進化
あるいは「#マカンコウサッポウ」。2013年に女子高校生たちが撮った1枚の写真が世界を駆け巡る。波動を起こしたかのようなポーズの女子を中心にして、周囲の子がぶっとばされているかのような写真がTwitterにアップされると、そこから多くの模倣が生まれ、しまいには海外まで広まっていった。
格闘ゲームや格闘漫画といった先行コンテンツをパロディーにした1枚の写真がもとになり、まるで増殖するかのように広がっていったのだ。まるで昔から存在するウイルスが突然変異を起こして、瞬く間にパンデミックを起こしたかのようであり、そこではひとりの女子高校生が「ミーム」を受け継ぎ進化させ増殖させる役割を果たしたかのようでもある。
くだんの女子高校生は、あたかも「ミーム」を受け継ぎ進化させ増殖させる役割を果たしたかのようであった。
という具合にミーム、ミームと先ほどから連呼しているが、そもそもミームとはいったい、何か。
改まった説明をすると、これはこれはインターネット文化の生まれる以前の1976年に、動物学者で進化論者のリチャード・ドーキンスが『利己的な遺伝子』で提唱した造語である。ここでドーキンスは、ミームを「文化の伝達のための基本単位(ユニット)」であるとし、また遺伝子と同様に増殖や進化によって生き延びようとするのだと説いた。
これをもとにして『ソーシャルメディアの生態系』では、生物とソーシャルネットワークの類似性を見出し、そこでのミームの働きを詳(つまび)らかにしていく。
すなわち、SNSによって形成された人と人とのつながりの集合を「有機体」とみなし、一人ひとりのユーザーを「細胞」に見立てる。そこでは文化的遺伝子「ミーム」は細胞同士に共有されたり、あるいは増殖したりして、それによりソーシャルメディア全体を進化させていくのだという。
「ウォータゲート事件」から遠く離れて
『ソーシャルメディアの生態系』には「○○ゲート」を用いた、ミームをわかりやすく説明するエピソードがある。これは1974年に米国でおきた「ウォーターゲート事件」を元ネタにしたものだ。
「ゲート」は本来「門」を意味する単語に過ぎない。それがウォーターゲートビルという建物を舞台にした政界スキャンダルが起きると、それを機に「ゲート」は隠蔽や疑惑を意味する接尾語に変貌をとげる。
例をあげると、ビル・クリントンとモニカ・ルインスキーが大統領執務室で性的な関係を持った出来事は「モニカゲート」と呼ばれるのであった。政治がらみのものばかりでなく、「ニップルゲート」(スーパーボウルでのパフォーマンスの最中に、ジャネット・ジャクソンの乳首が出た事件)なんてのもある。
このように「ゲート」は本来の意味を離れ、別の意味を持つようになったのだ。いわば文化的な遺伝子に変化したのである。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら