1995年 速水健朗 著

転機の年を対象に、「歴史を横に読む」試み

評者 上智大学経済学部准教授 中里 透

「地平らかに天成る」。そんな願いをこめて名付けられた平成のこれまでの25年間は、波乱の時代であった。とりわけ、阪神・淡路大震災(1995年1月)から北海道拓殖銀行・山一証券の経営破綻(97年11月)に至る約3年間の出来事は、戦後のある時期まで当たり前のことと思われていた「安心」や「安全」や「安定」が、身の回りから急速に失われつつあることを強く印象付けるものであった。本書は、このような「日本社会の変化を強く認識する機会となった転機の年」を対象に、「歴史を横に読む」試みである。

本書の目次をながめただけでも、さまざまなことが思い出される。1月17日未明、震度7の大地震が神戸の街を襲った。3月20日の朝、営団地下鉄の車内で「地下鉄サリン事件」が発生した。「住専問題」と「二信組事件」によって大蔵省に対する批判が高まり、財金分離をめぐる議論へとつながっていった。「就職氷河期」の到来によって若年層の非正規雇用が増大し、この世代はいつしかロスジェネと呼ばれるようになった。

こうした中にあって、明るい話題を提供したのは、ウィンドウズ95の発売である。「マルチメディア」を駆使した「高度情報化社会」がどのようなものになるのか、その未来予想図はまだおぼろげなものであったが、パソコンとケータイとインターネットは確実に世の中を変えていった。

本書でなされている興味深い指摘の一つは、95年が「バブルの時期からたった5、6年あとの世界」であるにもかかわらず、「バブルの時期よりも現在に近い時代であるように」思われるということだ。この時間的な距離感の非対称性についてさらに考えていくと、これからの経済と社会の姿が見えてくるかもしれない。

ちくま新書 798円 222ページ

はやみず・けんろう
フリーランスライター・編集者。1973年石川県生まれ。コンピュータ誌の編集を経る。専門はメディア論、都市論、ショッピングモール研究、団地研究など。TBSラジオ「文化系トークラジオLife」レギュラー。著書に『都市と消費とディズニーの夢』など。

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