日本の合計特殊出生率が、2012年には1.41を記録しました。これから先は母集団となる出産適齢期の女性の数が減っていくため、出生率が多少上がっても人口は維持できず、日本社会の人口は、2048年ごろには1億人を切ると予想されています。これは年平均で70万~80万人の減少を伴う、日本社会が経験したことのない激変です。1年で島根県が消えたり、北九州市が消えたり、といったスケールの人口減少が起きるのです。
働く人がどんどん減っていく社会になるわけですから、働く人を増やす政策をとらざるをえないでしょう。その場合、選択肢として可能性があるのは、既婚女性、高齢者、移民、この3つしかありません。
そうした背景もあって、女性の活用を、という政策が打ち出されるのですが、それを少し別の角度から考えてみたいと思います。「女性の活用」「仕事と家庭の両立」などといわれるのですが、「ちょっと待たんかい」と私は思うのです。そもそもこれは女性の問題なのでしょうか?
男性の家事の少なさは、もはや「社会問題」
2011年の社会生活基本調査によると、共働き世帯の女性の平均家事・育児時間は1日4時間53分なのに対して、男性は39分と約8分の1にすぎず、欧米や中国に比べてはるかに短くなっています。女性はパートなどのケースも多く、もちろん家庭の事情はそれぞれなのでしょう。ですが私は、ここまでバランスの崩れた家事分担のあり方というのは、もはや「社会的に」問題とすべき水準にあると考えています。
少し例えを使ってみましょう。今、植林をする林業者と、植林をしない林業者が、競争をしたとします。これは必ず、植林をしない林業者が勝ちます。相手の林業者が植林をしている間も木を切り続けることができ、木1本にかかる工賃が安くなるからです。
消費者が何も知らなければ、植林をしない林業者の安い木のみが売れ、やがて日本中の山がはげ山になります。そして30年後に、私たちはその保水力を失った山林からの大水害という形で、30年間植林の代金を払ってこなかったことのツケを一気に払わされます。実は、私たちは植林をする林業者の高い木を1本1本買うことで、30年後の大水害を防ぐコストを積み立てていたのです。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら