「少子化と何の関係があるんだ!」と思われたかもしれませんが、植林をしない林業者を男性労働者、植林をする林業者を女性労働者、植林を子育てと置き換えてみてください。どうして企業が、女性よりも男性を雇う傾向があるかがわかります。
つまり先ほどの家事労働時間の男女差を考えれば、企業は女性を雇ったときには、家事・育児の時間があるために、子どもが熱を出したときの対応や、夕食の準備などを考えて、夜遅くまで働かせることはできないと考えます。育児休業も、取るのは圧倒的に女性が多いので、共働き世帯でも育児全般を主に女性が担っていることになります。
ところが男性は、あたかも背後に子どもや要介護の高齢者は、いないかのごとく働きます。ほとんど家事をしないために、残業もさせやすい。
植林、つまり子育てのコストは、女性労働者の肩の上にのみ加算されているように、企業には見え、したがって植林のコストがかからない、男性労働者を雇いたいと考える企業が多くなってしまうのです。
しかし、こうした状況が長く続けば、植林のコストが払われないまま、労働力という木が売れている状態が続くわけですから、日本中がはげ山になります。これが「少子化」という現象です。つまり今の日本の職場は「植林(子育て)をしながら働く」という当たり前のことができにくくなっており、実は、次世代の育成に必要な植林のコストを、応分に負担していない状況が長く続いているのです。
「育休3年」は結果として女性差別!
子育てのコストが女性と男性との間で対等に分担されていない、という問題が解決しないかぎり、逆に言うと、男性を雇っても、女性を雇っても、「背後には子育てのコストがある」と考えられるようにならないかぎり、この問題は完全には解決しないのです。
夜遅くまで人を働かせることは、植林をしない林業者の木を買い続けているのと同じ現象で、短期的には、そして一企業にとっては、一見メリットになるように見えます。しかし社会全体としては、次世代の労働力を再生産できない、というたいへん大きなデメリットを抱えることになるのです。逆にいうと、安倍政権の育児休業を3年に延ばすという政策提案も、決して働く女性の選択肢を増やすものではなく、雇用の入り口での女性差別を必ず助長します。
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