Appleみたいな商品を作っても売れない真因 流行の「デザイン思考」の落とし穴

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P&Gの「クレスト」という練り歯磨きは、キャップのネジに練り歯磨きがついて乾き、キャップが閉まらなくなるのが悩みだった。そこでワンタッチ開閉式で解決を図った。しかしこれだけでは解決できなかった。顧客を実際に観察すると、昔どおりの方法でキャップを何回もひねって開けようとして、逆に開けられなくなってしまったのである。

折衷案として1回ひねるだけで開けられるキャップにしたら大好評。ヒット商品になった。現場で顧客を徹底的に観察し、何が問題なのかを見極めることが大切だ。

もう1つ紹介しよう。ワルシャワにあるソフトドリンク会社は、テレビでIDEOの特集番組を見て、こう思った。

「意外と簡単だな。自分たちもできるかも……」

彼らは地元の駅で乗客にドリンクを売るヒントを探すため、観察を開始した。現場で観察すると、一定のパターンに気づいた。乗客の何名かが、電車到着前の数分間、一度飲料スタンドを見て、自分の腕時計を見て、その後にホームの先を見ているのである。

そこでこの会社は、時計を大きく目立たせた飲料陳列棚のプロトタイプを作成した。すると売り上げが急上昇した。飲料スタンドに時計があるので「到着前にドリンクを買える」とわかるからだ。

このようなアイデアはいくらオフィスでウンウンうなって考えても、絶対に出てこない。そこでデザイン思考では顧客を観察して潜在的な課題を理解し、アイデアを出し、プロトタイプを作り、検証する。

ブレインストーミングでアイデアが生まれない理由

多くの会社で、アイデアを生み出すためにブレインストーミングを行っている。しかしなかなかアイデアが生まれないのも現実だ。やり方が間違っているのである。本書では「ブレインストーミングの6つの落とし穴」を挙げている。

[落とし穴1] 鶴の一声で始める
→冒頭で上司が「新しいアイデアがほしい。特許を狙うぞ」と発言したりすると、発想の自由が奪われ、部下は萎縮し、最初からアイデアは出なくなる。
[落とし穴2] 全員に必ず順番が回ってくる
→強制してもアイデアは出ない。民主的な悪平等だ。
[落とし穴3] 専門家以外は参加禁止にする
→凄いアイデアの多くは、素人発想だ。
[落とし穴4]社外(リゾートなど)で行う
→本来、その開放的な環境を自社につくるべきだ。
[落とし穴5]ばかげたアイデアを否定する
→奇抜なアイデアこそ、革新の種である。
[落とし穴6]すべてを書き留める
→書き留めている間は、アイデアは思いつかない。

これらすべては、アイデアを生み出すブレーキだ。「ウチの社員、アイデアがないんだよなぁ」と嘆くマネジャーがいたとしたら、実はその人自身がダメな元凶なのである。

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