Appleみたいな商品を作っても売れない真因 流行の「デザイン思考」の落とし穴
本書では「ブレインストーミングを成功させる7つの秘訣」も紹介している。
→ 「AI技術で何ができるか、アイデアを出そう」というテーマでは、「AI活用」という手段が発想の制約になるし、範囲も広すぎる。主語を課題や顧客にし、絞り込むべきだ。例えばこのように設定する。「来日する海外旅行者が、道に迷わないようにする方法は?」。
→IDEOの会議室にはこんなルールが大きな字で書いてあるという。
「量を狙え」「思い切ったアイデアをどんどん出そう」「目に見えるように表現しよう」。これらはよりよいアイデアを大量生産するためだ。
→「数」は「質」を生む。さらに数は参加者を刺激する道具にもなる。1時間に100個のアイデアが出る会議は、流動的で質が高いという。
→議論の流れの勢いが衰えてきたら、ファシリテーション役が議論を別の視点に誘導し、アイデアを積み上げ続けることが必要だ。
→人はアイデアを書き留めた場所に戻ると、そのアイデアを思いついたときの記憶が呼び戻される。
→こんな時には有効だ。
①参加者同士が一緒に仕事をしたことがない。
②参加者同士が頻繁に議論したことがない。
③別の差し迫った問題で気が散っている。
→いろいろな素材をその場に持ち込んで、実際に手に取って組み合わせることで、アイデアを表現できる。次に紹介するプロトタイプづくりの際には有効だ。
プロトタイプをつくる
幼稚園児は天才だ。思いついたらすぐに泥や粘土をこねたり積み木を組み合わせて、時に大人も驚くようなモノをつくり上げる。この作業がまさにプロトタイプだ。ちょっと考えたことをすぐ形にし、気に入らないとすぐに壊し、つくり直す。しかし大人になった私たちは、この方法を忘れてしまっている。
デザイン思考では、プロトタイプを問題解決手段として使う。「プロトタイプなんて、お金も時間もかかって大変だ」と思うかもしれないが、そんなことはない。先に紹介した、ワルシャワのソフトドリンク会社が作った時計が大きく目立つ飲料陳列棚も、簡単に作ってみたプロトタイプだ。
IDEOが新しい鼻の外科手術道具の開発プロジェクトに参加していたときのこと。外科医と構想を議論していたが話は堂々巡り。するとIDEOの若手エンジニアが席を立ち、5分後に戻ってきて外科医に「ほしいのはこれでは?」と図の左のプロトタイプを見せたところ、外科医たちは異口同音に「まさにコレだよ!」。
これは図の「ディエゴ・システム」という電子メスになり、多くの手術で使われるようになった。このプロトタイプは製作時間5分、費用は数百円もかかっていないだろう。しかしアイデアを出す段階ではこれで十分だ。
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