Appleみたいな商品を作っても売れない真因 流行の「デザイン思考」の落とし穴
トム・ケリーはデザインコンサルティング会社IDEO(アイデオ)のエグゼクティブだ。IDEOは多くの業界で新商品開発プロジェクトを支援してきた。アップルの最初のマウスも、ジョブズの依頼でIDEOが関わった。
本書はIDEOが持つ約4000件の経験を基に2001年に出版され、デザイン思考の源流となった。ここではトム・ケリーがその4年後に出版した『イノベーションの達人!』(共著)の内容も含め紹介しよう。
IDEOの方法論を一言でまとめると、
②実際にどのように使うのかを観察し、
③アイデアを重視して解決策を生み出し、さらに
④解決策が本当に役立つかを確認する。
という実践的なものだ。そこでまずデザイン思考の重要ポイントを見ていこう。
ユーザーを徹底的に観察し、理解する
ハナコさんは夫の実家で、(塩辛いなぁ。ちょっとムリ……)と思いながら食事中。そこへお義母さんがニコニコしながら聞く。
「ハナコさん、お味はどう?」
「とってもおいしいですわ。お義母さま」
実は顧客も、ハナコさんと同じである。
IDEOはあるソフト会社の依頼で、新アプリのユーザーの反応を観察した。部屋に集められた人たちは操作しにくいアプリを、顔をしかめ、ため息をつきながら不器用に使っていた。終了後にソフト会社から「改善点は?」と聞かれた彼らは、こう答えた。
「何の問題もない。改良すべき点は1つも考えられない」
まさに「とってもおいしいですわ。お義母さま」のハナコさんである。顧客は何がどう悪いのかをうまく説明できないのだ。
だから顧客に聞くだけではダメなのだ。自分の目で顧客を観察し、実際に確かめるのである。
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