Appleみたいな商品を作っても売れない真因 流行の「デザイン思考」の落とし穴
私たちはこう考えがちだ。
「大事なお客様には、中途半端なアイデアを出してはダメだ」
これがいけないのだ。
「お客様に思い切ってアイデアをどんどんぶつけていこう」と考えれば、多くのプロジェクトで立ちはだかる壁が、斬新なアイデアで打開されていく。このときにプロトタイプは大きな武器になる。ハードルを下げ、アイデアを具体化してくれるのだ。プロトタイプづくりは、新商品・サービス・プロモーションなど、多くの分野で有効だ。
デザイン思考を導入する日本企業の課題
もともと私たちは、幼稚園児の頃は発想が柔軟だった。しかし大人になる間に、いつの間にか硬直化しているのが現実だ。アイデアが出てこない問題の本質は、企業が社員の自由で新しい発想を呪縛していることだ。
例えばデザイン思考を学んだ現場社員が奇抜なアイデアを出して、上司のマネジャーが「そんな馬鹿げたアイデア、失敗するに決まっているだろう。やり直しだ!」と言うと、どうだろう。せっかく会社としてデザイン思考に投資しても、その投資はムダである。
デザイン思考で成果を生み出すためには、考え方を変えることが必要だ。
「マネジメント」ではなく、「個人の自発に任せる」
「ティーチング」ではなく、「コーチング」
「コンサルテーション」ではなく、「ファシリテーション」
「社内に籠もり考える」ではなく、「現場で顧客から学ぶ」
現場社員だけでなく、経営陣も含めてマネジメントも、デザイン思考の基本的な考え方を学び、日々の経営判断で実践することが必要なのだ。発想の呪縛を解き放つうえで、本書は大きな示唆を与えてくれる。
前回の連載記事で紹介した野中郁次郎・竹内弘高著『知識創造企業』でも、「知識社会では新たな知識を創造する能力が、企業の競争力を左右する」として、個人同士で暗黙知と形式知をやり取りし続けながら、組織として新たなアイデアを生み出し続ける具体的な仕組みを解き明かした。
しかし日本企業が組織として暗黙知を生み出す力は、いつの間にか衰退してしまった。この力を復活させるうえで、デザイン思考は大いに役立つ可能性を秘めている。一方で指摘したように課題もある。だからこそ、デザイン思考の本質を理解することが必要なのだ。
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