子育てに必須「知育アプリ」に訪れている変革 アプリ開発者が「WWDC」参加を通して得たもの

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アップルはApp Storeのビジネスに関して、独占してきた立場で自由競争を阻害している、と消費者からの集団訴訟に直面している。すでに5月中に米国向けのウェブサイトでこうした批判への反論を公開しているが、6月に入って日本語版のページも追加された。

WWDC19でも、App Storeに関する開発者からの質問にたくさん答えてきたというアップル。ユーザーが安心して使えるスマートフォンを目指すと同時に、アプリを作って販売する側にも、またそれを使う側にも、膨大な時間とコストを軽減している点をアピールしていた。そのうえで、15~30%の手数料が高いというのは誤解で、不可能を可能にしている点がもっと評価されるべき、という考えを披露していた。

現在もApp Storeが成長し続けている点から、ユーザーは必ずしもすべて無料がいいわけではなく、安全なアプリを求めているとして自信を強めている。App Storeの現在のビジネスモデルに理解が得られている点を強調した。

現状App Storeには、有料アプリ、App Storeを通じたサブスクリプションに加えて、無料アプリを通じて独自のサービスを提供する月額料金モデルも設定できる。その場合アップルからは手数料を徴収されない(ただし、自社で課金プラットフォームを開発をする必要がある)。

これはアップルがKindleやSpotify、Netflix向けに用意した「リーダーモデル」(Reader Model)と呼ばれ、BtoB向けの教育アプリサービスを提供する場合に、多くの企業が活用している。

また前述のとおり、アジア圏を中心として広告による収益をあげる無料アプリも展開しており、広告収入についても、アップルから手数料をとられることはない。

教育系サービスやアプリの未来

アップルが言うように、アプリのビジネスモデル自体はアプリ開発者側に委ねられており、各アプリ開発者は市場の変化やビジネスのゴールから、収益モデルの試行錯誤を繰り返している。例えばスマートエデュケーションの場合、これまで子ども向け知育アプリを展開してきたが、主軸をBtoBへ移し、チームワークや創造力、生きる力を育むアプリを育てていきたいという。

スマートエデュケーションに限らず、知育アプリだけでは、明確な効果測定を設定することが難しい。ビジネスアプリで数字として生産性の向上を語れるほど、子どもの成長は単純なものではないからだ。

そこでBtoC向けには「子どもたちの爆笑を獲得すること」をゴールにしつつ、大人が面白いと思えるものを子ども向けに再解釈して伝えていくことを目指すという。また今後、大人、高齢世代向けのニーズにも可能性を感じているという。

教育系のサービスやアプリは、新学期に間に合わせるようなタイミングでしかビジネスのチャンスが得られない点、そして日本に限らずスケール(コスト削減)が難しい点が一般的な見方だった。それだけに、スマートエデュケーションのビジネスの展開に、課金の方法やターゲットの転換など、柔軟さがある点は意外だった。

今後価値観が変わっていく中で、時代に合わせた教育がアプリで提供される未来は、すでに訪れているのかもしれない。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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