34歳「地図の新しい見方」を探求する男の仕事観 幼児期の原体験が「空想地図」につながった

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2014年には「アウト×デラックス」(フジテレビ)にも出演した。

「一見順調でしたが、何の戦略もなくやっていました。『空想地図』もいろいろな手法で露出しましたが、『そろそろ出し尽くしたかな?』という感覚になりました。

近い将来、ガクンと収入が下がる時が来るのではないか?と危惧していました」

その予想は残念ながら当たってしまった。2018年の春になって、急に仕事がなくなってしまったのだ。

「覚悟はしてましたけど『この時がついに来たか-』と、ため息が出ました」

アルバイトを再開して月収を手に入れようかとも考えた。

ただ、短期的な収入に頼るのはいかがなものかと思った。ここは無理をしてでも新しい本を書いて、新たな道を見つけるべきではないだろうか?と考えた。

「新刊の企画は実は2年前に通っていました。ヒマになった今、書くべきだろうと思いました。『空想地図で得てきた、独特の表現手段を世間に伝えることができないかな?』とずっと考えていました」

世の中には地図が苦手な人が多い。今和泉さんの友人にも地図が嫌いな人はいて、地図の知識のない人と話す機会も多かった。

「政治や経済の話であれば知りたい人が多いから、知らない人に解説する人がたくさんいます。例えば池上彰さんみたいな人ですね。でも地図においてはそういう人がいないんです。私なら伝えられるんじゃないだろうか?と思いました」

地図が苦手な人に読んでほしい

2018年は『「地図感覚」から都市を読み解く: 新しい地図の読み方』の執筆に明け暮れた。そして2019年3月に無事上梓することができた。

「『地図が読める人』はどのように地図が見えているのかを紹介しました。地図が苦手な人に読んでほしいですね。本を1冊読んでもらえれば、いつの間にか地図の見方が変わっていると思います。

逆に地図が読める人には

『あ~そうそう。いつも無意識にやってるけど、具体的に絵にしてもらえるとよくわかるね』と思ってもらえたら嬉しいですね」

ここにきて新しい方向性を打ち出した今和泉さんだが、今後どのように展開していくかはまだ未知数だ。

『「地図感覚」から都市を読み解く: 新しい地図の読み方』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

ただ個人的な意見としては『地図の見方を啓蒙する』というテーマは広く受け入れられるような気がする。

かくいう僕も地図を見るのが苦手なのだが、著作を読ませてもらって少し得意になったような気がした。

「とにかくずっと1人で本を作っていたので、疲れてしまいました。今は誰かと共著を作りたい気分ですね(笑)」

今和泉さんにはこれからも、地図の“新しい見方”や“新しい遊び方”を提案してほしいと思った。

村田 らむ ライター、漫画家、カメラマン、イラストレーター

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むらた らむ / Ramu Murata

1972年生まれ。キャリアは20年超。ホームレスやゴミ屋敷、新興宗教組織、富士の樹海などへの潜入取材を得意としている。著書に『ホームレス大博覧会』(鹿砦社)、『ホームレス大図鑑』(竹書房)など。

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