不動産会社の印象が悪化したわかりやすい経緯 業界はあまりにも複雑化してしまった

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不動産会社はいつから悪いイメージをもたれるようになったのか(写真:makaron*/PIXTA)

「ブラック企業」という言葉の一般化のおかげか、以前ほど不動産会社を悪しざまに言う声を聞かなくなった気がするが、それでも不動産業はなぜかイメージのよい商売ではない。

だが、昭和の新聞連載漫画のベストセラー『サザエさん』に登場する不動産屋の花沢さんは決して悪い人ではなかったはず。それが今では、正直であるだけでマンガになってしまうほど。いつから“悪い人”のイメージがつくようになったのか。主に賃貸仲介を例に見ていこう。

今、世の多くのビジネスはシンプルに向かっている。かつては多くの業界で、生産者と消費者の間には複数の卸売業者、問屋などが挟まっているのが当たり前だった。ところが、農家や漁師が消費者に直販するスタイルが出てきているように、昨今は中間事業者を排除する方向がある。ところが、それにまるで逆行しているのが不動産業界である。

わかりにくさがイメージの悪さに

賃貸契約時の煩雑さを見ればわかりやすいだろう。30年前には礼金・敷金、前家賃を大家に、仲介手数料を不動産会社に、損害保険料を保険会社に払えばよかった。

だが、今では連帯保証人を頼んでいるにもかかわらず保証会社に保証料を払い、24時間駆けつけサポートにサービス利用料を払い、カギの交換代や消毒料、害虫駆除代、消臭料……と、物件あるいは会社によって支払い項目が倍ほどにも増えている。しかも、会社によっては空室に消臭剤を撒く程度ということすらある。

「そのわかりにくさが悪いイメージにつながっている」と指摘するのは不動産会社尚建の徳山明社長だ。バブル期以降、「楽して儲かる」と業界には不動産会社のほか、投資家など多くの人が参入したが、一方で家賃下落や空室の増加など収益の低下もあり、それが業界内に新たなビジネスを生み続けてきた。

ただ、利幅が薄くなった分、新たに違う価値を創出しようというのではなく、既存の仕組みの中で利益を生む口実を考え続けてきたことが業界を複雑化し、怪しく見えるようにしてしまった。

実際にどんなことが起きてきたか。

まずはバブル期。今につながる出来事が2つある。1つは不動産投資という考え方の一般化だ。その頃までの賃貸物件は農家など土地を持っている人がそこに住宅を建てて貸すもので、多くの大家は自分で掃除するなど管理も行っていた。そこに「もっと建てれば儲かる」と吹き込んだ人たちがいる。

「そうしたら掃除の手が足りなくなる」と反論する土地所有者には「大丈夫です。全部私たちがやります。不動産経営は何もせずに楽して儲かります」と答えた。そこに「土地活用」という言葉、管理会社、サブリースという仕組みが生まれたわけである。サラリーマン大家が生まれたのもこの時代だ。区分所有の1室やワンルームアパート1棟を買い、ローンの金利相当分の所得税が戻るという節税メリットがウケた。

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