不動産会社の印象が悪化したわかりやすい経緯

業界はあまりにも複雑化してしまった

同時期くらいから入居者が払う仲介手数料を半分、あるいはゼロに、という動きも出てくる。ADが取れるなら、消費者には安く借りられる会社というイメージをアピールしたほうが得ということだろうが、ここでの値下げ合戦は業界の仕組みをより複雑にしていく。家賃滞納を保証する会社の登場がその1つだ。

それまでは不動産会社が自ら審査を行い、滞納に対しては督促を行っていたものをアウトソーシングしたのである。それにより、不動産会社は代理店手数料という新たな収益源を得る。

以前からあったカギの交換費に加え、消臭費や浄水器販売など付帯ビジネスも徐々に増え、2005年前後には現在あるような形になっていたと永井氏は言う。不動産会社の業務範囲も各社異なるようになる、何をやっているかがわかりにくい状況が出現した。

IT系企業の参入がイメージ悪化を助長

2000年以前に比べると、賃貸住宅契約時の費用のうち、礼金・敷金、仲介手数料は全体に安くはなっているが、ほかの費目が増えた分を考えると、単純に安くなっていると言い切れるかどうか、契約、物件によっては微妙なのである。

かつてに比べて利幅の薄くなりつつある不動産業界だが、それでも新たに参入する人たちがいる。IT系の人たちだ。たくさんの情報を同じ基準で集めて検索できるようにするのはITの得意とするところ。そのため、多くの人は気づいていないが、不動産会社と言いつつ、基本はIT企業も多いのである。そして、それがさらに不動産会社のイメージを悪くしている部分がある。

「IT系不動産会社は、賃貸情報をネット通販していると考えればわかりやすい。『私の希望の物件を探してください』ではなく『これください』という人を相手にしています。

町や物件の説明もできず、多くの問合わせからすぐに決まりそうなもの以外は放置する。やることは契約書面の取り交わしのみ。これでは不動産会社は何もしていないのに、手数料だけ取ると思われることになります」と、不動産会社ルームキューブの榎本敦史社長は話す。

もちろん、賃料と立地、広さなどの条件が合っていればどんな部屋でも問題ない人ならばそれで問題はなく、実際、そうしたサービスも散発的に登場している。2014年には仲介手数料は無料だが、物件探しと見学有料というビジネスモデルが話題になった。しかし、現存はしていない。

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