不動産会社の印象が悪化したわかりやすい経緯 業界はあまりにも複雑化してしまった
こうした大家に共通するのはいずれも素人で、自分では何もやらない、責任も取りたくないという点だ。それが後日のさまざまなサービスの登場を受け入れる素地になったのである。
もう1つが1990年に登場した「レインズ(Real Estate Information Network System=不動産流通標準情報システム)」だ。不動産情報の標準化・共有化を目指して登場したものだが、これによって1つの物件で入居者を決めるまでに、複数の不動産会社が関わることが増えた。それまでは建物所有者から直接依頼された不動産会社(元付などという言い方をする)だけが情報を持っていたが、レインズで情報が公開されて以降はマッチング(客付)だけを業とすることができるようになったのである。
不明な費用項目が増えた理由
新しいビジネスが誕生したとも言えるが、一方で「契約までが仕事」という会社の中には「入居後はどうでもいい」と考えるところもある。近年、入居者の勤務先などを偽装するビジネスが登場しているが、そうしたビジネスが生まれるにはそれなりの理由があるのである。
また、1件の契約を2、3社で分け合うことになれば、同じ仕事をした際の報酬は当然ながら半分、3分の1と減っていく。それをどうするか。カギ交換や消毒といったワケのわからない費目は、長い時間をかけてその埋め合わせのために生まれてきたと言ってもよいのである。
といってもレインズが誕生したのはバブル真っただ中。誰も現在のような状況は想像していなかった。しかし、バブル崩壊後、売買価格ほど急激ではないものの、賃料も緩やかに下落、入居者の懐具合も寂しくなり、空室増と住宅をめぐる状況は徐々に悪くなっていく。2000年以降には礼金・敷金の下落が始まる。
「2000年前後にそれまで家賃の各2カ月分が一般的だった礼金・敷金をゼロにした商品を出した会社があり、それがきっかけになりました」(全国賃貸住宅新聞・永井ゆかり編集長)
さらに2001年にはJ-REITが登場。個人の大家さんよりも収益に厳しい彼らは、早く入居を決めるのが大事と2004~2005年頃から契約を決めてくれた会社に対して「AD(広告費と言われる。バックマージンと言えばわかりやすい)」を払うようになる。
これにより、消費者にとっていい物件よりも、自分たちに広告費が入る物件を決めようとする不動産会社が出始める。歩合制が多い不動産会社の営業マンにとってはどれを決めるかで収入が決まるとなれば、自分が得する物件を勧めたくもなるわけだ。
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