見えない中での攻防戦「ゴールボール」の醍醐味 女子日本代表は、パラ4大会連続出場している

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視覚障がい者は、日常生活で感覚が研ぎ澄まされていくのだろうか。こちらは物(ゴール)があるとわかっていても数歩歩くだけで不安になるのに、どこに障害物があるかわからない街の中を自由に歩いているのだから、感覚のすごさに敬服する。

ボールを投げる、防ぐという体験もした。投げるのは何とかできるのだが、意外とボールが重いので投げにくさもある。防ぐには「防御姿勢」というものがあり、片膝を少し浮かせて座って、ボールの鈴の音を頼りに左右に身体を投げ出すようにしてブロックする。

ボールはバスケットボールの硬さはないにしても、重さは約2倍の1.25キロなので、体に当たったら痛い。1.25キロのダンベル、肉、野菜など、思い浮かべてみるとわかる。軽く転がしているのだが、それが体のどこに当たるかわからないので、それもまた恐怖だ。手足ならまだいいが、おなかなどに当たると痛い。

何より、鈴の音を聞き分けるのが結構大変だ。体験練習なので、コートの横幅を使って4組が一斉に始めたので、左右の鈴の音が気になって、肝心の自分のところに来るボールの音を聞き分けられないことも多かった。

試合は静けさの中で行われる

試合は、シーンとした中で行う。観客は「固唾をのんで」見守る。攻撃側は投げるときに、守備側の不利になるような音を出した場合にノイズという反則もある。静かな中に鈴の音だけが聞こえる、という展開になるため、得点を決める、防ぐといった瞬間にドッと沸くことになる。

体験会としては、ほんの触りだけだったが、「怖さ」と「痛さ」は実感できた。何も見えない中で、ゴールボールの選手たちは「怖さ」「痛さ」を克服してコートを動き回っている。

パラリンピックで女子は銅メダルを取った2004年アテネ大会から4大会連続で出場し、2012年ロンドン大会では金メダルに輝いている。2020年東京パラリンピックでも期待されている競技である。

赤坂 厚 スポーツライター

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あかさか あつし / Atsushi Akasaka

1982年日刊スポーツ新聞社に入社し、同年からゴルフを担当。AON全盛期、岡本綾子のアメリカ女子ツアーなどを取材。カルガリー冬季五輪、プロ野球巨人、バルセロナ五輪、大相撲などを担当後、社会部でオウム事件などを取材。文化社会部、スポーツ部、東北支社でデスク、2012年に同新聞社を退社。著書に『ゴルフが消える日 至高のスポーツは「贅沢」「接待」から脱却できるか』(中央公論新社)。

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