25万キロリットルというと、ボクも大いに貢献している日本の年間ビール消費量は500万キロリットル台だから、このタンク約20杯分のビールが1年間で消費されるということだ。この国では20日に1回くらいのペースで、このタンク一杯分のビールが消費されるということだが、いまひとつピンとこない。
タンクの内径は72メートル、深さは61.7メートルで、奈良・東大寺の大仏殿がすっぽり入る大きさというのだが、大きいのか小さいのかピンとこない。目の前の鶴見つばさ橋の路面から海面までの高さは約60メートルだから、それより少し深いくらいだ。「ジャンボ機も縦に入ります」。堤さんが助け船を出してくれるのだが、頭の中には旅客機が穴の中で逆立ちしている倒錯した世界が広がるだけだ。
前々から思っていたのだが、大きな物の大きさを表現するのは、とても難しい。かつては霞が関ビル、最近は東京ドームを枡代わりにいろいろなものを測る風潮があるが、あれでどれだけ大きさを実感できるか、はなはだ疑問だ。疑問なのだが、つい、そうやって換算したくなる。
円墳のような4号タンク
レクチャーも終わり、いよいよタンクを見に行く。講義を受けていた部屋を出ると「トイレは大丈夫?」と大きな声が響いた。振り返ると、一目見ただけで親切とわかるオジサンが「男性はこっち、女性はこっちね。それから、ヘルメットはここ」と手慣れた感じで案内してくれる。胸の名札には「田口」とある。
言われるがままに用を足し、タンク行きのマイクロバスに乗り込むと、田口さんは、こちらに大きく手を振ってくれた。
4号タンクのふたの側らに着いた。これは明らかに何かに似ている。
あ、円墳だな。そうつぶやいてしまった。4号タンクの内径は72メートルでこんもりした部分は高さ約8メートル。一方で仁徳天皇陵の後円墳の径は75メートルほどで、高さは約14メートルというから、大きさはほぼ同じで、高さはこちらの方がやや低い。
円墳に見えるふたは、上からかぶせたわけではない。タンクの底で組み立てて、それを空気圧を使って宙に浮かせ、タンクの縁に固定しているのだ。これを「エアレイジング方式」という。ふたの重さは約960キロもあるのだが、表面積が大きいので、空気圧でふわりと浮き上がるのである。
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