「森を破壊しない」ハンバーガーはなぜ必要か 持続可能な食材調達を求められる外食産業

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日本マクドナルドの接客風景。持続可能な食材の使用を大きく増やしている(撮影:梅谷秀司)

WWFジャパンでは2018年6月時点で日本国内で100店舗以上を展開している大手ハンバーガーチェーン6社(日本マクドナルド、モスフードサービス、ケンタッキーフライドチキン、ロッテリア、フレッシュネス、ファーストキッチン)を対象として、食材調達に際しての森林破壊防止に関する取り組みを、CSRレポートやホームページでの公開情報、個別面談などを通じて評価した(https://earthburger.jp/detailshttps://earthburger.jp/assessment/mc)。 

この調査は日本独自のもの。日本の外食産業は先進国の中でも持続可能な食材調達の取り組みが遅れているという意識が、1つのきっかけになったという。

今年2月に発表された評価結果では、日本マクドナルドはパーム油、紙、牛肉の3項目において、他社と比べて断トツで高い得点を獲得した。その一方で、残る5社の取り組みの遅れが鮮明になっている。

「よい品を安く」は得意だが

日本の外食産業は「よい品質のものを安く提供する」ことに力を注いでおり、消費者の信頼は概して高いといえる。ただ、その食材調達が地球環境の面で将来にわたって持続可能かとなると話は別だ。多くの外食企業は持続可能な食材調達に関する調達方針をもっておらず、トレーサビリティー確認の取り組みも遅れている。

例えば、熱帯雨林の破壊で大きな問題となっているパーム油は、生産されたものの約8割が食品業界で使用されているといわれている。そのパーム油の原料となるアブラヤシの約85%はインドネシアとマレーシアで栽培されており、農園開発に伴って熱帯雨林や泥炭地が失われ、森林火災やメタンなど温室効果ガスの排出、野生動物の絶滅の主因になっている。しかし、日本ではそのことは必ずしも広く知られていない。

消費者の認知も不十分だ。WWFジャパンが東京・渋谷区を中心としたハンバーガーチェーン来店者(64人)を対象にしたアンケート調査によれば、「ハンバーガーに使われているパーム油のために、熱帯林が伐採されていることをご存じですか?」との質問に対して、「知らなかった」と答えた人の割合が89%にも達していた。

牛肉や包装紙を含めて「森林破壊の原因の一つがハンバーガーであることをご存じですか?」との問いに対しては、「知っている」はわずかに3%。私たち日本人の多くが原料の生産実態についての知識を持っていないことが明らかになった。

そうした現状を変えるべく、WWFジャパンでは「アースバーガープロジェクト」(「アース(地球)バーガー」は、森にやさしいハンバーガーの意味)と題したキャンペーンを2月20日から3月31日にわたって実施した。森林破壊を伴わない食材で調理したハンバーガーを提供するとの趣旨に賛同した全国の25店舗が参加し、約1200個を販売。アースバーガーが販売されるごとにWWFジャパンに100円が寄付される仕組みで、寄付は森林保護に役立てられる。

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