「森を破壊しない」ハンバーガーはなぜ必要か 持続可能な食材調達を求められる外食産業

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キャンペーンに参加した東京・渋谷のハンバーガーショップ「VANDALISM」の山口隆実取締役は「ハンバーガーを提供するプロセスにおいて、森林破壊の事実や動物の生息が脅かされていることを初めて知った。自分たちでできることは何かを考えるきっかけになった」と語る。

渋谷のハンバーガーショップVANDALISMの「アースバーガー」。WWFジャパンの基準に則した素材で作られている(撮影:今井康一)

WWFジャパンではホームページ上にアースバーガーの特設サイトを開設。賛同メッセージを入力すると、その内容が大手バーガーチェーン6社に届けられるようになっており、その数は2139通に達している(現在は終了)。

こうした「アースバーガー」の取り組みを進めている理由について、WWFジャパンの南明紀子氏は、「地球環境を意識した食材調達の取り組みの必要性を外食産業に認識してもらうこと」を挙げる。

日本企業は調達実態そのものが不明瞭

WWFジャパンによれば、欧州では輸入されたパーム油のうちで、森林や泥炭地の破壊、労働者の搾取を伴わずに生産された製品の割合がすでに80%を超えているのに対して、日本では調達実態そのものが明らかになっていない。

それを裏付けるように、今回、WWFジャパンが実施した大手ハンバーガーチェーン6社の評価結果でも、持続可能な食材調達方針の策定や認証製品の使用状況などで取り組みの格差がきわめて大きく、全般的な遅れが明らかになった。

日本マクドナルドが5月22日から配布を始めたトレイマット。「森の未来を守るポテト?」と題して環境への配慮への取り組みをアピール(提供:日本マクドナルド)

WWFジャパンの調査とは別に、東洋経済でもチェーン各社に対し持続可能な食材調達に関して問い合わせてみたものの、日本マクドナルドを除き、「特段、取り組みは進んでいない」との回答が目立った。

もちろん、環境保全の手法はさまざまで、1つの物差しでは測れない側面はある。しかし、世界の需要が増える中で、このままでは持続可能な食材は調達そのものが困難になる可能性もある。2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックでも、木材や紙、パーム油など品目ごとに持続可能な調達のためのルールが設けられたが、日本企業の取り組みは進んでいるとは言いがたい。

そうした中で今年4月には「日本における持続可能なパーム油の調達推進」を目的とした推進組織JaSPONが発足。食品や化粧品・日用品メーカー、大手流通企業がWWFジャパンなどとともに発足メンバーに顔をそろえた。消費者のなじみが深い外食産業でも、前向きな取り組みが望まれている。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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