大混雑の成田空港、「顔パス搭乗」は救世主か 世界の空港で採用、NEC「顔認証」技術の実力

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ただ顔認証技術にはプライバシーに関する懸念も付きまとう。特にアマゾンやマイクロソフトなど、顔認識システムを開発する企業の多いアメリカでは顕著で、今年5月にサンフランシスコ市議会が警察や市営交通などの公共機関による顔認識システムの導入を禁じる条例案を可決した。アメリカの地方自治体としては初の試みだ。

大手人権団体・アメリカ自由人権協会(ACLU)など、顔認識技術の反対派は、ほかの生体認証システムと異なり、一般的なビデオカメラを使えば対象者の同意なしに監視できるシステムが作られてしまう点を指摘する。また、顔認識を行う人工知能(AI)の学習に用いられるデータが人種的に偏っていることの懸念もあるという。

成田空港では個人情報をどう扱うか

今回の成田空港のシステムでは、顔認証を使うかどうかは搭乗者が同意した場合のみ。同意すると、チェックイン時に撮影された顔写真、パスポート情報、搭乗情報をひも付けたデータが、成田空港の運用するサーバーに一時的に格納される。搭乗者のフライトが出発した後、顔認証に使われたデータは消去される仕組みだという。

成田空港の濱田氏は、「パスポート情報や顔認証にかかわるデータはセンシティブな個人情報だ。われわれがどのようにデータを利用するかはきちんと開示する。外部の専門家とも法的な問題がないかを話し合いながら慎重に進めたい」と話す。

NECは顔認証だけで決済ができる仕組みも開発。試験導入する施設も広がっている(撮影:今井康一)

NECは空港内外での顔認証の活用拡大も検討する。空港到着後の交通機関の利用や、免税店での決済などといった具合だ。前出の受川氏は、「空港外でも顔認証を活用するとなると、個人情報を成田空港のサーバー外にも共有することにはなる。もちろんユーザーからの同意は大前提だ」と説明する。

ただでさえ手続きが多く、長い行列ができやすい空港では運用の効率化は不可欠だ。顔認証技術に対する空港や航空会社の期待は大きい。ただ利便性の裏にあるコストについても、慎重に見極める必要がありそうだ。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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