社内の「逸脱者」から成功事例を探すべき理由

「戦略的思考・ロジカルシンキング」の弊害

ただし、PDを組織内に見つけ、それを社内で普及させようとするとき、トップダウンでやるとその効果は限定的です。それはジェネンテック社でも例外ではありませんでした。彼女たちから学んだことをベスト・プラクティスとしてトップダウンで普及させようとしたのです。その結果、一部の営業担当者に受け入れられただけで終わったのです。

論語に下学上達という言葉があります。下学とは身近なところから学ぶこと、それを通じて上達していくことです。学習はトップダウンでやると反発を招きやすいものです。そうではなく、対象となる人たちが本当にその重要性を実感し自発的に学ぶことが大切なのです。

反省なんてくそくらえ!

このPDアプローチと親和性が高いのが、OODAループです。PDアプローチは、OODAループ(観察、情勢判断、決定、行動)の中で、観察、情勢判断が強く関わってくることになります。まず、身近なところのPDを探すという意味では観察の方向性を与え、PDから学ぶという意味ではその情勢判断を強く規定します。

とくに、OODAループの中では情勢判断がBig O(Oとはorientationの頭文字を指す)と呼ばれるように、OODAの中で最も重要な構成要素となります。問題は、この情勢判断をどうすればよいのかという点です。

何か問題に直面した場合、戦略的思考、ロジカルシンキングのツールを活用していると、まずは悪者探しの分析を行い、悪者という観点から情勢判断をする傾向が強く出ることが、多くの企業に見て取ることができます。

こうした身内の悪者探しという反省的なアプローチをとるのではなく、PDアプローチのようによい面に着目し、そのよさをさらに伸ばそうとすることのほうがはるかに効果的です。とくに、イノベーションを目指す場合、反省ばかりしていると萎縮してしまい、失敗のリスクの高い新たな探索をしようという意欲をそぎます。

「イノベーションには反省はいらない、ただチャンスをつかめ」

これは私の尊敬するベンチャー経営者が語った言葉です。ここでいう反省とは、自分の悪い点に着目するということです。戦略的思考、ロジカルシンキングと呼ばれるものは、この反省が出発点になります。すなわち問題の原因を特定し、それを是正することです。このいわば悪者探しこそが、戦略系コンサルタントが好むアプローチになっています。

通常のオペレーションの中では、この悪者探しは重要な役割を果たします。しかし、何か新しいことを目指すのであれば、このような反省は不要です。というよりも、イノベーションを阻害します。といってそれを全面的に否定するわけではありません。局面によっては反省も必要です。ここで強調したいのは、それが強調されて全面に出てしまうとイノベーションが阻害されるということです。

イノベーションに成功したシリコンバレーの起業家を対象にした調査では、その大きな特徴として彼らの楽観的性格が指摘されています。あら探し、反省志向的人間ではなく、反省はそこそこにしておいて、それよりもチャンスを探すのです。

幅広い探索を奨励するというのが共通点です。失敗を反省し悪い点を探すのではなく、よい点やチャンスを探すこと。むしろ、「反省なんてくそくらえ!」と開き直るぐらいの気概が必要です。そしてそこから下学上達していくこと、これがイノベーションの本質です。

後者のアプローチでは、失敗でさえ反省材料として捉えるのではなく、それをチャンスととらえます。このような楽観的アプローチはPDアプローチと親和的であり、OODAループを高速で回すことにつながるのです。

イノベーションの確率を高めるには、OODAループを高速で回すことが鍵です。このスピードは、当事者の楽観的、積極的態度に依存しており、それらはPDアプローチによってさらに加速化されることになります。

もし、新しい境地を切り開こうとしているのであれば、今日から悪者探しという反省、分析、戦略的思考、ロジカルシンキングはやめるべきです。そうではなく、楽しくチャンスを探す旅を目指すべきなのです。

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