社内の「逸脱者」から成功事例を探すべき理由

「戦略的思考・ロジカルシンキング」の弊害

渋沢は、利他と自利が一体であること、さらに言えば、倫理と利益は表裏一体であることを名著『論語と算盤』の中で語っています。それが義利合一論とか道徳経済合一説と呼ばれるものです。

利他的に行動することが結果として自利につながるのです。後者を全面に出すと、最終的には利益も奪われてしまいます。そうでない例もあるかもしれませんが、渋沢によると、「その富は永続することができぬ」(渋沢栄一『論語と算盤』角川ソフィア文庫、22ページ)のです。

渋沢がこのような論語を基軸とする経営哲学を確立できたのは、言うまでもなく江戸時代の徳育の影響です。江戸時代、教育といえば四書五経の学習、つまり徳育でした。だからこそ、岩倉使節団が欧米を訪問しているとき、野蛮国から来たと見下されていた彼らの振る舞いがあまりに紳士的であったので、驚きをもって賞賛されたのです。

渋沢は、西欧の新しい科学技術、文明に飛びつくのではなく、彼にとって身近な思想、すなわち論語を経営の基軸に据えたのです。和魂洋才の和魂とは、渋沢にとっては論語だったわけです。

半径10メートルの思考

昔話に「ネズミの嫁入り」という物語があります。このような話です。

年頃の娘をもつネズミの老夫婦は、大切に育てた娘に、日本一の婿をもらおうと考えました。この世で一番偉いのは太陽だろうと思い、太陽のところで、娘を嫁にもらってくれないかと尋ねます。すると太陽は、大変ありがたい話だが、どうしても私が勝てないのがいる。それは雲だ。日の光を注いでも雲に邪魔されればどうしようもない、と言う。

次に、雲のところに行くと、雲は、風に吹かれるとどうしようもないので、風には勝てないと言いました。次に、風のところに行くと、風はそこにある壁にはどうしても勝てないとなり、最後に壁のところに行くと、ネズミには勝てない、ネズミに穴を開けられるとどうしようもないと告げられました。その結果、隣に住むちゅう助と結婚したという話です。

この話の教訓として私が最も重要だと思うものは、答えを外に求めてはいけないということです。答えはつねに身近なところにあります。渋沢が経営の答えを論語に求めたのも、外ではなく内に答えを求めた結果です。この身近なところで答えを探すという思考の癖は、「半径5メートル以内の思考」と呼ぶことができます。10メートルでも構いません。要するに、身近なところに答えが転がっているということです。

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