プラスチック汚染が人類の未来に影落とす根拠 代替品使用で始める「脱プラ生活」のすすめ

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温暖化のことを考えると、使い捨てプラスチックは今世紀後半以降なくさざるをえないです。プラスチックはナフサという原油の中の一成分で作られています。プラスチックを作る側のこれまでの言い分は、原油からガソリンや重油やアスファルト等をとる際に出てくるナフサを有効利用してプラスチックを作っており、プラスチックだけを作ることをやめることはできないというものでした。

2050年以降、産業が成り立たない可能性も

ところが、パリ協定を遵守すれば、今世紀後半以降、石油を燃やすことはできず、地下に原油が埋蔵していても採掘して燃料として利用することはできなくなるのです。そうなると、逆に、プラスチックを作るためだけに原油の採掘もできないということになります。

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バイオマスプラスチックへの転換やプラスチックを使わない生産・流通の仕組みを作らなければいけない時代になります。あと30年でそういう時代が来ます。ヨーロッパはそこに向けて舵を切りました。日本もそのような転換を行わないと、2050年以降、産業自体が成り立たなくなります。

プラスチック汚染を食い止めるためには、消費者、産業界、行政の協働が必要だと思います。

市民が使い捨てのプラスチックを使わないようにしたり、プラスチック製容器入りの製品を選ばなくなることにより、プラスチック汚染を実際に減らすことができると思います。

一方、生鮮食料品のパッケージ等、消費者の努力だけでは減らせない部分も多く、生産や流通の業界が素材を変更することも必要になると思います。さらに、そのようなプラスチックを減らす取り組みの公的枠組みを作る行政の役割も不可欠だと思います。みんなで協力することが必要です。

高田 秀重 東京農工大学 農学部環境資源科学科教授

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たかだ ひでしげ / Hideshige Takada

環境中における微量有機化学物質の分布と輸送過程をテーマに、河川、沿岸域、大気、湖沼など、地球表層全般を対象に、国内外をフィールドとした研究を続けている。2005年からは、世界各地の海岸で拾ったマイクロプラスチックのモニタリングを行う市民科学的活動「International Pellet Watch」を主宰。また、国連の海洋汚染専門家会議のグループのメンバーとして、世界のマイクロプラスチックの評価を担当。日本水環境学会学術賞、日本環境化学会学術賞、日本海洋学会岡田賞、海洋立国推進功労者表彰(内閣総理大臣賞)など受賞多数。共著書に『環境汚染化学』(丸善出版)がある。

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