1999年が映画の「当たり年」と断言できるワケ 「マトリックス」「ファイト・クラブ」豊作揃い
映画史における最高の「当たり年」は?
「好きな映画」というのは、おおむね個人的な基準(好み、気分、見たタイミング、余韻など)で決まる。対して「映画の当たり年」というのは客観的な基準、例えば興行収入や野心的な試みや革新性(ストーリーや撮影技術、特殊効果など)、それに文化的インパクトで決まる。『風と共に去りぬ』や『オズの魔法使』『スミス都へ行く』『駅馬車』が生まれた1939年は当たり年。国民に深まるシニシズムと不信感を映し出す『真夜中のカーボーイ』や『イージー・ライダー』『ワイルドバンチ』『ひとりぼっちの青春』の1969年も当たり年だ。
ならば最高の当たり年はいつか? ブライアン・ラフテリーは新著『映画最良年――1999年がスクリーンを揺るがせた理由』で自説を展開している。
ラフテリーは同年にエンターテインメント・ウィークリー誌が同様の特集を組んだときのライターだった。その後はGQやワイアードに原稿を書きながら20年間にわたって映画を見続け、99年が最高の年であるという確信を深めていった。
この本の執筆のため、ラフテリーは監督や俳優など130人以上に取材。その結果、99年最高説を掲げるのは自分だけでないことに気付いたという。
あの年は独立系の『マルコヴィッチの穴』(スパイク・ジョーンズの監督デビュー作)や『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』から超大作の『マトリックス』や『ハムナプトラ/失われた砂漠の都』まで、実に斬新な作品がそろった。
関係者が明かす製作エピソードや、ラフテリーの鋭くて公正でウイットに満ちた分析が満載された同書は、著者の30年にわたる映画愛の集大成と言える。本誌メアリー・ケイ・シリングがラフテリーに話を聞いた。