1999年が映画の「当たり年」と断言できるワケ 「マトリックス」「ファイト・クラブ」豊作揃い

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――99年の作品で、今だったら製作されそうにないものは?

代表作はどれも厳しいだろう。フィンチャーは超低予算でアングラ風にも作れるし、スター主演の大作にもできると言って『ファイト・クラブ』を20世紀フォックスに売り込み、後者で撮った。今なら超低予算版だな。

映画ではなく別の形になるかも。『ボーイズ・ドント・クライ』はドラマ化してもいい。『ハイスクール白書』の原作は緻密で登場人物の多い小説だから、HBOのミニシリーズ向きだろう。『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』はポッドキャストで、謎の音源をめぐる実験的なホラードラマにできるんじゃないか。

観客がこういう作品を求めなくなったわけじゃない。ただ、映画館に行くとは限らない。

完璧に完成されていた『ハイスクール白書』

――99年の最優秀作品を選ぶとしたら。

『マルコヴィッチの穴』も『素晴らしき映画野郎たち』も、一部の人にはブーイングされそうだが『ファイト・クラブ』も大好きだ。『ファイト・クラブ』みたいに、後味が悪いのに笑える映画は本当に珍しい。

そうは言っても、『ハイスクール白書』に1票だな。理由は脚本から演技まで、100万くらい挙げられる。とにかく、ほかにやりようがないくらい隅から隅まで完璧に作られた感じがするんだ。僕が取材したフィンチャーやソフィア・コッポラも、『ハイスクール白書』をとても高く買っているよ。

――死ぬまで何度でもリピートしたい99年の作品を5本選ぶとしたら?

トップ5ではなく、純粋に何度見ても飽きない映画を選ぶなら......『サウスパーク 無修正映画版』は癖になるね。それと、いつ見ても昨日作られたように新鮮な『ハイスクール白書』。

『マルコヴィッチの穴』は何度見ても笑えるし、『スリー・キングス』にはハラハラする。

信じてもらえないかもしれないが、すごく評判の悪かった『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』もいい。僕は死ぬまで『エピソード1』について議論し続けるだろう。たとえ議論の相手が自分しかいなくなっても。

――最後に。99年のワースト映画を教えてください。

文句なしに『ワイルド・ワイルド・ウエスト』だね。

「ニューズウィーク日本版」ウェブ編集部

世界のニュースを独自の切り口で伝える週刊誌『ニューズウィーク日本版』は毎週火曜日発売、そのオフィシャルサイトである「ニューズウィーク日本版サイト」は毎日、国際ニュースとビジネス・カルチャー情報を発信している。CCCメディアハウスが運営。

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