ホットケーキを侮る人が知らない経営の超本質 わざわざお店で出せるほどの徹底した差別化

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「おいしい」にしても「美しい」にしても、「そこそこおいしい」「そこそこ美しい」ではお客さまを逃すことになりかねない。本物の差別化を実現し、長く繁盛させるためには、「めちゃめちゃ」が大切なのだそうだ。

「めちゃめちゃおいしい」「めちゃめちゃ美しい」「めちゃめちゃ安い」など、「めちゃめちゃ」こそが真の差別化のキーワードだということ。

天然資源に恵まれない小さな島国にある日本企業が、世界と伍してやってこれたのは、「めちゃめちゃ」にこだわってきたからです。
しかし、最近の日本企業を見ると、「そこそこ」「ほどほど」で妥協してしまっている会社を数多く見受けます。それでは世界をアッと驚かせるような差別化を生み出すことはできません。
外からは見えませんが、ホットケーキの繁盛店は「めちゃめちゃ」を生み出すために、試行錯誤を繰り返し、真の差別化を実現することに成功しているのです。(177ページより)

ビジネスと紐づけたこと自体がイノベーション?

日本のものづくり企業が大切にしてきたものが、ホットケーキの繁盛店で息づいているというわけである。

『「ホットケーキの神さまたち」に学ぶビジネスで成功する10のヒント』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

先に触れたとおりPart Iは、遠藤氏の「取材」によるホットケーキの名店紹介になっている。当然のことながら、軸になっているのは「ホットケーキ好き」としての視点。写真も美しいので、ホットケーキにさほど思い入れのない私も食欲を刺激された。

続くPart IIではビジネス的な観点からホットケーキ店を検証するのだが、さまざまなエピソードもふんだんに盛り込まれているので、ビジネス的な思考をものにできるだけでなく、純粋に読み物としても楽しめる。

先にも触れたとおり、本書で強調されているのは「差別化」や「イノベーション」の重要性だ。しかし考えようによっては、ホットケーキとビジネスをひもづけようという発想それ自体が、「差別化」であり「イノベーションだと考えることもできるのではないだろうか。

印南 敦史 作家、書評家

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いんなみ あつし / Atsushi Innami

1962年生まれ。東京都出身。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。「ライフハッカー[日本版]」「ニューズウィーク日本版」「WEBRONZA」「WANI BOOKOUT」などで連載を持つほか、「ダ・ヴィンチ」など紙媒体にも寄稿。『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)、『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)など著作多数。

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