ホットケーキを侮る人が知らない経営の超本質 わざわざお店で出せるほどの徹底した差別化
「深める」ためには時間も手間も必要となるが、だからこそ、他者にマネのできない独自の差別化が可能になるのである。
ここで遠藤氏は、経営学者のピーター・ドラッカーが経営の目的を「顧客の創造」と定義したことを引き合いに出している。いうまでもなく顧客とは、企業が提供する商品やサービスの価値を認め、対価を払って手に入れようとする人たちである。
しかし顧客は、最初から存在するわけではない。つまり、潜在顧客が「欲しい」と思うような価値を生み出し、「潜在顧客を顕在化させること」こそが経営の本質。
ホットケーキの繁盛店はそういう意味において、一見ありふれているホットケーキにこだわり、その付加価値を高め、顧客を創造することに成功しているということだ。
真の差別化は「価値の復号化」から生まれる
差別化が大切だとはいっても、競争が激しくなればなるほど、ただ1つの差別化だけでは勝てなくなってきているとも遠藤氏は指摘している。
差別化には「安い」「品質がよい」「性能がよい」「デザインがよい」などさまざまな方法があり、ひと昔前であれば、なにか1つ差別化できていれば十分にやっていけた。
差別化=「価値の複合化」
ところが競争が激しさを増していくに従って、複数の差別化を同時に実現する必要性が生じてきたということ。単に安いだけではなく、「品質もよいが、それに加えてデザインもおしゃれ」だというように。
顧客にとっての価値を複数組み合わせることによって、ほかがまねできない本物の差別化が生まれ、差別化の持続性も長くなるということ。このような取り組みを「価値の複合化」と呼ぶ。
ホットケーキも同じで、繁盛店は「わざわざ食べに行きたい」と思わせるだけの「おいしい」という価値を生み出し、差別化に成功している。食べ物だから、おいしさはなにより重要だ。ホットケーキ店にとっては、「家庭では食べられない本物のホットケーキの味」を提供することがすべての入り口となるのである。
しかし繁盛店は、「おいしい」という価値だけで終わっていない。「美しい」というデザイン性の高さ、遊び心、見た目のインパクトなどを重視してこそ、それが本当の意味での差別化につながるからだ。
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