ホットケーキを侮る人が知らない経営の超本質 わざわざお店で出せるほどの徹底した差別化
パンケーキとは異なり、ホットケーキはデコレーションのないシンプルな食べ物。だからこそ、その姿や形はダイレクトに伝わる。味も形もシンプルだからこそ、ごまかしの効かない強烈なインパクトを与えうるというのだ。
ご存じのとおりビジネスの世界では、「モノからコトへ」という流れが顕著になっている。商品という「モノ」の付加価値が相対的に低下する一方、消費者は経験という「コト」に対して喜んでお金を払うようになっているわけだ(「コト消費」)。
令和の時代に人々が求める「価値体験」
重要なポイントは、自動車や電化製品などの商品が以前ほど売れなくなっているなか、旅行やレジャーの需要は確実に増えていること。つまり消費者は、「経験価値」を求めているのである。
繁盛店に海外からの顧客が押し寄せるのも、「おいしい」と「美しい」を自らが同時に体験し、それを友人たちに自慢することが目的化しているからなのだ。
昭和の香りが残るレトロなお店に、若い世代や訪日外国人が押し寄せることについても同じだ。ほかでは味わえない独特の雰囲気に身を置くという「経験」が求められているわけである。
シンプルなものでもイノベーションは生み出せる
究極の差別化は、この世に存在しないまったく新しい価値を生み出すこと。すなわち「イノベーション」である。
とはいえホットケーキについては、「こんがり焼けていて、バターとメープルシロップで食べるもの」というようなクラシックなイメージが圧倒的。多くの名店が提供しているのも、そうしたクラシックタイプだ。
イノベーションの入り込む隙などありそうにないのだが、その一方、「えっ、これがホットケーキ?」と思うほど斬新で、モダンなホットケーキも誕生しているのだとか。
その代表例として紹介されているのが、神保町の「TAM TAM」だ。見た目も、味も、食感も、クラシックなホットケーキとはまったく別。誰もまねのできない「唯一無二」のホットケーキなので、まさに「ホットケーキのイノベーション」だというのである。
石窯で焼かれるため、こんがり焼けた表面はパンのよう。そこにカリッとナイフを入れると、蒸気がふわりと上がり、現れるのは黄金色のスポンジ。バターと生クリームとメープルシロップを絡めると、陶然とするおいしさなのだという。
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