追い込まれる巨大マスコミの構造問題

業績が軒並み急悪化!

通常の業界であれば、市場縮小を見越したうえで、下位企業同士の合併など再編が巻き起こってもおかしくはない。が、総務省から電波を割り当てられた免許業種であるテレビ局は、経済原則どおりに動くことはない。「マスコミ集中排除原則」により、テレビ局間の株式保有には上限が設けられているのだ。

ただ、同原則は緩和の方向にある。総務省は、NHKや全国の民放局が行っている地上波放送のアナログからデジタルへの移行をスムーズに進めるため、08年4月に放送に関する基本法の放送法を改正。一部のテレビ局がデジタル化投資の負担に耐えられず経営難に陥ることが予想されたため、「認定放送持株会社」の傘下に最大12局のテレビ局を収められるようになった。ただし、キー局は1局が7局とカウントされるルールが設けられており、キー局同士の経営統合はできない立て付けだ。

ただ、最大12局と定めているのは、総務省の省令だ。法改正の必要がないため、キー局同士の統合を可能にすることは比較的容易である。キー局の経営がいよいよ危なくなれば、総務省は放送を停止させないために、省令を改正して、キー局の再編を促さざるをえない状況になる可能性もある。

新聞はテレビ以上に深刻

「大阪は東京以上に広告収入が激減している。ある準キー局の経営が相当危ないらしい」

事情通の番組制作会社社長はそう言い切る。準キー局とは、大阪を地盤とする関西テレビ(フジ系列)、読売テレビ(日テレ系列)、毎日放送(TBS系)、朝日放送(テレ朝系列)の4社のこと。自社制作番組の比率が高く、売り上げも数百億円とキー局に次ぐ規模のため、こう呼ばれている。

このうち、ある老舗局の経営が悪化しており、その救済のため準キー局同士で経営統合すると見られているのだ。認定放送持株会社制度では、準キーは1局が6局にカウントされる。そのため、現行制度のままでも準キー同士の統合はいつでも動くことができる。これがテレビ業界再編の発火点になるかもしれない。

苦しいのはテレビだけではない。新聞はいっそう深刻な危機に見舞われている。電通が月次で発表している同社の月次広告売り上げによると、08年12月の新聞は前年12月比で18%も減少している。テレビが前年12月比10%減にとどまっているのと比べると、より落ち込みがきつい。

「08年度上半期の広告収入は前年同期比で80億円以上のマイナス。年度を通じると200億円に手が届く大幅減収になるかもしれない」

朝日新聞社の秋山耿太郎社長は1月5日、社内の新年祝賀会で、予想を上回る広告収入減少が続いていることを報告。「かつて経験したことのない厳しい逆風」「先の見えない長いトンネルに入ってしまった」と危機の深さを強調した。

原料高に伴う08年春からの用紙代値上げもあり、朝日の08年9月中間期決算は5億円の連結営業赤字に転落。テレ朝株の売却損により連結最終赤字は103億円に膨らんだ。「勝ち組」「負け組」の差はなく、新聞産業全体が沈む構図に陥っている。

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