混沌たる世界を「アニメ」はどう変えられるのか トンコハウスの堤監督とコンドウ監督に聞く

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アニメスタジオ・トンコハウスのロバート・コンドウ監督と堤大介監督(撮影:吉濱篤志)
街を見下ろす丘の上にある風車に住む孤独なブタの少年と、転校生フォックスの友情を描いたアニメ映画「ダム・キーパー」が、アカデミー賞短編アニメーション部門にノミネートされたのは2015年のことだ。日本人監督の作品がアカデミー賞の候補になったことは、日本でも大きな話題となった。
手がけたのは、カリフォルニア州バークリーと日本に拠点を置くアニメーションスタジオ、トンコハウスの堤大介監督とロバート・コンドウ監督。ともにアニメーションスタジオのピクサーで、アートディレクターだった頃に、堤監督自身が脚本を書き、2人が監督として自主制作したのが「ダム・キーパー」だった。
いわば“エリート”だった2人はその後、安住の地を飛び出して2014年にトンコハウス設立する。日本で育ち、アメリカの最高峰のスタジオでキャリアを積んだ堤監督と、日系アメリカ人のコンドウ監督。多様なバックグラウンドを持つ2人が率いるスタジオの強みは1つの国や1つの手法にとらわれない自由さにあるだろう。
2人の挑戦はとどまるところを知らない。アニメ制作や展示会を続ける傍ら、4月末からはトンコハウスの作品のほか、2人がインスピレーションを受けた世界のアニメ20作品以上を1カ月に渡って上映し、ワークショップも行うというという大規模な試み「トンコハウス映画祭」を東京・新宿で開催。さらに、日本のコマ撮り専門スタジオ、ドワーフとともに鬼を主役に据えた新作「ONI(仮題)」の制作で、新たな境地に挑んでいる。「会社の成長より大きな夢がある」と語る2人の原動力は何なのか。来日した両監督に聞いた。

5年前に比べて、夢に現実的になった

──トンコハウスを設立して5年が経ちました。設立当初と変わったことは。

:5年前、僕たちはとても理想主義でした。たくさんの野望と夢があった。当初描いていた夢がなくなったということはありませんが、いい意味でも、悪い意味でもこういう夢に対して現実的になりました。

つつみ・だいすけ/東京都出身。スクール・オブ・ビジュアル・アーツ卒業。2007年ピクサー入社。アートディレクターとして『トイ・ストーリー3』や『モンスターズ・ユニバーシティ』などを手がけている。2014年7月ピクサーを去り、トンコハウスを設立。71人のアーティストが一冊のスケッチブックに絵を描いて、世界中に回したプロジェクト『スケッチトラベル』の発案者でもある(撮影:吉濱篤志)

前は「作りたいんだったら作っちゃおうよ」という感じでしたが、今は実際に作るのにどんなことをしないといけないか、本当に作りたいのかどうかを考えるようになった。かつては2人の旅でしたが、チームが大きくなり大きなことができるようになるのに伴って、より大きな責任感を感じるようになっています。

大きくなると同時に、「深く」もなってきています。自分たち2人が、そしてチームが何者であるかをより深く認識できるようになったし、世界に対してどういう影響を与えられるかという点におけるポテンシャルも理解し始めつつある。

僕には子どもがいるのですが、会社を始めるのも子育ても似ていると思う。最初は「これ、なんか楽しい」という感覚だったのが、ある日突然壁にぶつかる。そういう壁をいくつも乗り越えることで、どんどん成長していく。5年前に比べて、いろんな点で改善していて、自分たちがやりたいことがより明確になっていると思います。

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