高校は絶対に卒業するべきか?

授業が始まるとうつ症状になる娘

今日、あなたがだらだら過ごした1日は、昨日、亡くなった人にとっては、とても生きたかった1日

私の友人の娘さんが、やはり国立の進学校の高校生になったときのことです。とてもまじめで優秀で、学校の人間関係で何かが起きたというのでもなかったのも、あなたの娘さんと同じです。その娘さんが(親からみればある日)突然、登校拒否になりました。何カ月もの長い間、母娘げんかが続いた後、私が呼び出されました。「学校だけは行くように説得してほしい」と言うのです。

あなたの娘さんのように、外で遊び回る元気もない引きこもり状態でした。母親と私は親しくとも、その娘さんとは親しかったわけではありません。そんな私が彼女の部屋へ入るなり、彼女はおんおんと泣き出したのです。もう目はうつろで、心を病み、悩んで泣いた時間が長かったことが、ひと目でわかりました。学校なんてとんでもない状態です。母親はその種の専門知識を持つ職業に就いている人なのに、わが子に限ってという思い込みが、判断を誤らせていたようでした。

「わかったよ○○ちゃん、学校には行かなくていい。私からお母さんに責任を持って言ってあげるから」と、力強く言ってあげました。「つらかったでしょう? ともかく学校へは行かなくてよいから」と、それだけを。友人には、通学にこだわって問題がこじれ、あのままもっと健康を害したら、元も子もなくなると忠告しました。

その娘さんがうつ病だったのか、治療を受けずに済んだのかはあえて問わず語らずで、「落ち着いている」という報告を聞きながら時が流れました。どちらだったにしても参考になるといいのですが、本人の望みどおり、高校を休学ではなく退学した彼女と2年後に会ったときは、目が輝いていました。

学校をやめるといったん決めると、母娘のストレスがその分、軽減したのか、ゆっくりとですが双方に落ち着きが戻ってきたそうです。娘さんはその後、大検に合格して看護師養成学校に入り、看護師になりました。そして国立大学付属病院で手術専門付きの看護師となり、苦労した分、同僚にも患者さんにも優しくて、とても人気があったそうです。

過去形でお話しましたのは、彼女は勤務の傍ら看護大学の教授を目指して勉学途中、ほかの病気で30歳前に夭逝しました。彼女がみんなから慕われていたことは、そのお見送りの日に駆け付けてくださった大勢の先輩と同僚の弔辞で知りました。

「今日、あなたがだらだらと過ごした1日は、昨日亡くなった人にとってはとても生きたかった1日」という言葉があります。まじめに生きていない人を見ると、私はこの言葉と彼女を思い出します。

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