――その頃は推理物というフォーマットは意識していたのですか?
いえ、最初は意識していませんでした。霊能力を否定している手品師と、だまされやすい物理学者というコンビネーションということ。科学者たちが見破れなかった霊能力者たちのトリックを、ひとりの手品師が見抜いてしまったという実話。その面白さをドラマにできないかということでした。
――『トリック』といえば過酷なロケが語り草となっていますが、今回の海外ロケは大変だったのではないでしょうか。
「結局、海外に行っても洞窟か」とか、「どこに行っても因習に閉ざされた村なのか」など、いろいろ言われました(笑)。でも、それはそれで『トリック』らしくていいと思いましたけどね。ただ景色の違いだったり、川をさかのぼったりするような場面は今までなかったし、ああいう湿度の高いような、汗がにじむような画面もしばらくなかったのです。
最初の『トリック』は7月期のドラマだったので夏に撮影しました。だからけっこうみんな汗だくになっていて、それが画面にも反映しているのですが、その後のシリーズは秋や冬に撮影したものが多いのです。皆さんのイメージの中でも奈緒子の白いコートと、赤いマフラーの印象が強いのではないかと思います。これは阿部(寛)さんがよくおっしゃるのですが、汗がにじむような画が『トリック』の本道ではないのかと。そういう意味でも今回は1作目を思わせるものになりましたし、まさに、原点回帰にもなりました。
Vシネマよりも過酷なロケ?
――阿部さんは初期の撮影を振り返り、Vシネマの現場よりも過酷な現場だったと言っていましたが。
それはパート1のときの話ですよね。7月7日が初回のオンエアなのに、クランクインが6月21日だったんです。ありえないですよね(笑)。スタッフもキャストもみんな肉体がそのまま14年前だったので(笑)、乗り切れたのだと思います。「母之泉」のエピソードのときは、劇中で教団の建物となったロケ場所がそのままスタッフの宿泊所だった。本来は公共の宿泊施設で、会社とか学生さんの研修のために、大人数で宿泊するような施設なのです。そんな撮影現場にみんなが泊まり、明け方まで撮影して、倒れ込むように仮眠して、そのままむくっと起き上がり、そのまま撮影を始めるといった感じでした。阿部さんがおっしゃるのも、あながち冗談ではないのです(笑)。
(撮影:梅谷 秀司)
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