苛酷なロケから始まった「トリック」の14年 東宝・名プロデューサーが語る『トリック』の世界

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 自称「超売れっ子天才美人マジシャン」の山田奈緒子(仲間由紀恵)と、だまされやすい天才物理学者の上田次郎(阿部寛)という凸凹コンビが、不可思議な現象に潜む“トリック”を暴く――。2000年に深夜ドラマでスタートした「トリック」は、その斬新な謎解きの面白さと、濃ゆるい世界観が話題を集め、多くの視聴者の支持を獲得。その後も連続ドラマ3シリーズ、映画3作、スペシャルドラマ3作、スピンオフドラマ2シリーズが放送されるなど、その人気は確固たるものとなっている。
 そんな人気シリーズの完結編『トリック劇場版 ラストステージ』が1月11日から全国東宝系公開となり、14年にわたる歴史に幕を閉じることになった。今回はシリーズ初にして最後の海外ロケが行われ、マレーシアのボルネオ島のクチンというエキゾチックな雰囲気が漂う土地を舞台に、これまで深く語られることのなかった奈緒子の出生の秘密や、奈緒子と上田の関係性の進展などなどにも迫っている。
 本シリーズの立ち上げからプロデューサーとしてかかわったのが、東宝で映画企画部部長を務める山内章弘氏だ。今回はシリーズ14年間の歴史を見守り続けた山内氏に、『トリック』完結への思い、そして本作が描くテーマなどについて、2回に分けて聞いた。

――宣伝では「今回が最後」と大々的にうたっていますが、一方で「あえて言わなくてもいいじゃないか」「続きをやりたくなったらどうするのか」といった意見もあります。

それはいろいろな人に言われました。確かに今までも何回か「なんちゃってラスト」みたいなことはやってきたのです。ただ、それはあくまでも「なんちゃってラスト」なんですよ。最初から勢い込んで「今回終わりにしよう」と打ち合わせを始めたわけではないのですが、あえて言えば(笑)奈緒子の出生の秘密といいますか、本来、この作品でやろうとしていた「この世に霊能力というものはあるのか」「人はいったい霊能力をどうとらえているのか」といった本筋を、もう一度見直してみたかったのです。最初は毎週のように「本物の霊能力者はいるのです」というフレーズが出てきますが、シーズン2あたりからそれはあまり出なくなりましたから(笑)。

――確かに時を経るにしたがって、そういったテーマは薄れていったように思います。

『トリック』にはいろいろな要素がありますが、コメディ要素が際立ってしまった部分もあります。われわれも、そしてきっと皆さんもモヤモヤしていたドラマのテーマ性の部分に、そろそろ決着をつけてもいいのではないかと思ったのです。

僕らも誰かに肩をたたかれたわけでもないですからね。最後通告を受けたわけでもない(笑)。でも、どこかで作り手の面々も気になっていたというか、気になっていた部分に対する回答は、提示するべきなんじゃないかといった思いもありました。今回は気持ちがそちらに振れたということでしょう。ただ、キャストやスタッフもみんな信じていないみたいですけどね(笑)。

©2014「トリック劇場版 ラストステージ」製作委員会
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