苛酷なロケから始まった「トリック」の14年 東宝・名プロデューサーが語る『トリック』の世界

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リセットされるのが『トリック』の魅力

――確かに劇場版などでも、ふたりの距離が近づきそうなことを予感させながら終わるにもかかわらず、次のシリーズでは何事もなかったかのようにリセットされてしまいます。

そうです。何事もなかったかのようにリセットされるのがこのふたりですし、この作品の魅力だと思います。

――そのあたりは堤監督のテイストなのでしょうか?

そこは脚本家であり、プロデューサーでもある(東宝の)蒔田光治が持つシャイな世界観がベースにあり、そこに堤監督が持たれている不思議で広がりのある世界観がうまくマッチした結果が、いわゆる『トリック』テイストになったと思いますね。

――『トリック』の企画は、そもそも蒔田さんが「こういう企画はどう?」と山内さんに話したことが基になったそうですが、そのときはどういうやり取りをしたのでしょうか

わたしにとって蒔田はプロデューサーの大先輩なのですが、もともと彼は学生時代に「劇団そとばこまち」という劇団の座付き作家をやっていたのです。

――「劇団そとばこまち」といえば、生瀬勝久さんが座長をしていたことでも有名な劇団ですが。

だから2人には特別な関係性がありますね。蒔田は、東宝に入社してからはテレビドラマのプロデューサーとして活躍していました。私はなぜか本作以外でも蒔田と組むことが多かったので、次はこんなネタどうだろうといったことは、常々、話し合っていました。そんな中で、蒔田が温めていたアイデアのひとつに、アメリカの科学雑誌『サイエンティフィック・アメリカン』で霊能力者を募集したが科学者はそのタネを見破れず、それを手品師が全部暴いて見せたという実話があり、これを基に何かできないだろうかといった雑談をしていたのです。

霊能力なんか信じないという人も、お正月には初詣でに行ったりはしますよね。われわれも『トリック』みたいな作品をやっていて何ですが(笑)、おはらいをやったりする。でも、それが人間だよね、といったような話をしていて。そういう雑談が根っこにあったかなと思います。それが15年ほど前の話だったと思います。

©2014「トリック劇場版 ラストステージ」製作委員会
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