大津事故で見えたマスコミのミスと人々の悪意 感情論で終わらせていては本質に辿りつかない
5月8日(水)10時15分ごろの事故発生から2日が過ぎてなおワイドショーのトップニュースとして扱われていることが、事態の重さを物語っています。
保育園児の命を奪った滋賀県大津市の事故は、「加害者が前をよく見ていなかった」「車2台ともブレーキをかけていなかった」などの全容がようやく見えてきましたが、この2日間でさまざまな動きがありました。
なかでも象徴的だったのは、被害状況が明らかになる前に行われた保育園の記者会見。泣き崩れる園長、質問を続ける記者たち、それを見て怒りの声を上げる人々とワイドショーの出演者……世の中の論調は、「♯保育士さんありがとう」のツイートが広がるとともに、「正義の園長と悪のマスコミ」という構図になっていきました。
しかし、この構図こそが事件の本質からかけ離れる要因となるとともに、現代の人々が体内に抱える悪意そのものだったのです。
無慈悲な質問で保育園の潔白が明らかに
真っ先にふれておきたいのは、マスコミは本当に悪だったのか? ということ。
ネット上には、「マスゴミ」「バカ記者失せろ」「お前たち全員死ね」「〇〇新聞は滅べ」などの過激なフレーズが飛び交い、ワイドショーでも記者たちを糾弾するコメントが続き、さらにそれを見た人々が「よく言った! マスゴミとは大違い」と称賛されました。
「配慮に欠ける記者がいた」「必要のない質問があった」のは間違いないでしょう。しかし、質問の前に「こういうときにすみません」「こんなときに申し訳ないんですけど」「ご存知のところだけで結構ですので」と相手をおもんぱかるフレーズを発したうえで、できるだけ穏やかに声をかけようとしていた記者もいたのです。
そもそも会見が行われたのは、まだ事件の全容がわからず、加害者の情報がほとんどなく、園児の保護者説明会が開かれる前。マスコミにしてみれば、保育園の会見が早く行われたことで、質問の内容を「お散歩」「園児」の2点に絞らざるを得ないほど、情報がかなり限定されていました。これによって世間の人々は、「なぜ被害者であろう保育園に同じような質問を続けるのか? 先に報じるべきは加害者ではないのか?」という疑問を抱くことになったのです。
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