大津事故で見えたマスコミのミスと人々の悪意 感情論で終わらせていては本質に辿りつかない

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賢明なビジネスパーソンのみなさんは、こういう痛ましい事故が起きたときこそ、感情論ではなく、再発防止に向けた声を発信したいところです。

「保育士さんありがとう」では足りない

最後に、「♯保育士さんありがとう」のツイートについて。

人はねぎらいの言葉で救われるものであり、今回も被害者の保育士だけでなく、全国の保育従事者を癒やしたことは間違いないでしょう。そうしたツイートをした人が、マスコミを叩くだけの人よりも成熟しているのは明白であり、事実「日ごろお世話になっている保育士さんにあらためて感謝した」というポジティブなムーブメントをうながしました。

ただ、せっかくのポジティブなムーブメントが「ありがとう」だけで終わってしまうのは残念な気がします。感謝の声にとどまらず、「保育士にもっとよい労働環境を」「保育士の報酬を上げるべき」という声がもっと上がってもいいのではないでしょうか。

さらに言えば、子どもの成長や健康に貢献しているのは保育士だけではありません。「子どもに優しい社会を」と思っているのなら、小児科医や看護師、子育て中の親をサポートしている人、子ども用品の製造に携わる人などにも、「ありがとう」の声を届けるいい機会にも見えたのです。

痛ましい事故のときだけ当事者をピックアップして「ありがとう」と声を上げるのは、やはり一時の感情によるところが大きく、未来につながるところはさほどありません。日ごろ仕事の生産性を追求しているビジネスパーソンのみなさんなら、子どもに優しい社会を実現させるために、「ありがとう」にとどまらないさまざまな声を上げられるのではないでしょうか。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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