「前に出ないと気が済まない」上司の危うい思考

イエスや老子から学ぶリーダーに必要な素質

これはキリスト教に限った話ではなく、東洋文化に大きな影響を与えた中国の思想家・老子も「人の上に立とうと思うなら、謙虚な気持ちでへりくだりなさい」と述べています。

さらに「理想の指導者とは、みんなに『率いている』と感じさせない人だ」という言葉も残しており、「リーダーたるもの、一歩下がって援護に回り、部下を前に出して主体的に取り組ませなさい。部下が上司にリードされたことに気がつかず、『自分でやり遂げた』と思えるくらい、自然にリードしなさい」と解釈されています。

イエスと老子の言葉は、サーバント・リーダーシップの要諦について述べた教えであり、リーダーとは古来、「背中を押す人」だとされていたのです。

とはいえ、この「上に立つ人がサーブすべき」というのは、わかっていてもなかなか行動に移せない、非常に難しい心構えともいえます。

リーダーの思考の裏側に2つの心理

チームのメンバーにサーブせず、自分が先頭を走ったり、「自分が前に出る」という発想に陥ったりするリーダーの思考の裏側には2つの心理があります。

1つは、「自分以外、信用できない」という心理です。

これは能力が高く自信にあふれたリーダーによく見られ、「部下に任せたらこのプロジェクトは失敗するかもしれない。自分がやったほうが早いし、確実だ」と考え、一番前を独走してしまう心理です。これは一見、責任感とも取れそうですが、部下を信用していないというメッセージを送る行為にほかなりません。

2つ目の心理は、「部下にナンバー1の座を奪われたくない」というものです。

日本でリーダーの立場にある人の多くがプレイングマネジャーである以上、リーダーには「個人の成果」も求められます。それが、「自分以上に成果を出されたくない」という個人成果主義的な考えに結び付いてしまうのです。

このタイプのリーダーは、自分が1番でなければ気に入らないのでチームメンバーを育てようとしません。部下に仕事を任せることもなく、決裁権も持たせません。優秀な部下ができて追い抜かれ、一番前という自分のポジションを奪われるのが怖いのです。

独裁者が、ナンバー2が頭角を現してきた途端に暗殺したりする血なまぐさい歴史からも、この心理が見て取れます。

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